《東日本大震災から9年》ビルマテルの革バッグ・小物ブランド 南三陸の電子部品メーカーに生産依頼

2020/03/09 06:28 更新


アート性が高い「メゾンユキズナ」の商品

 被災地で生まれた新たな雇用の確保・維持にはボランティア精神だけでなく、事業の継続が欠かせない――屋上緑化が本業のビルマテル(東京)が新規事業としてスタートした革製バッグ・小物ブランド「メゾンユキズナ」。この生産を支えるのが、宮城県南三陸町の電子部品メーカー、アストロ・テック(佐藤秋夫社長)だ。今春は異業種との協業や百貨店での期間限定店も予定する。

 同事業は屋上緑化の発想から生まれた特許技術を応用する。知財コンサルティング事業部のプロジェクトから発展した。革の端材を独自のピース状に裁断し、つなぎ合わせると、六角形のレザーシート(10年に特許取得)になる。このシートを作るには手作業での高度な技術と繊細な力加減が必要だったため、生産先が見つからず数年にわたり開発がストップしたこともあったという。

 そうした中、東日本大震災で被災し、手作業での半導体部品の製作が一時できなくなっていたアストロ・テックとその年の夏に出会った。地元の雇用創出に前向きだった佐藤社長の思いも重なり、レザーシート作りを担ってもらうことになった。技術開発に5年かけ、16年にはパリの素材見本市「プルミエール・ヴィジョン」に出展し、サステイナブル(持続可能)な観点で海外メゾンから高い評価を得た。

 その後、国内のバッグメーカーと組み、自社ブランドとしてメゾンユキズナを18年3月11日に立ち上げた。百貨店での期間限定店の開催が相次いだ。革の端材を使ったサステイナビリティーとピースの組み合わせ次第で自由に表情を変えるレザーシートのアート性が支持された。「生産の大切なパートナーとして対等な関係を築き上げてきたからこそ事業の継続・成長につながった」(白井龍史郎ビルマテル専務)と強調する。

南三陸町の職人が繊細な手作業で作り上げるレザーシート

 今春には様々な百貨店で期間限定店を開く予定。原宿の商業施設内の資生堂の美の体験・発信拠点での期間限定販売、大丸東京店での期間限定店も行う。ECサイトも立ち上げ、「いろいろな場所や人との絆を結ぶブランド」としてさらなる認知度向上を目指す。

(大竹清臣)

一筋の明かり

佐藤アストロ・テック社長

 きっかけは、震災の年の7月。東京でビルマテルの白井庄史会長と出会い、お話を頂きました。何もかも失った中で一筋の明かりが見えた気がしました。新たな雇用が生まれると思って取り組み、その結果、3、4人が雇用でき、現在に至っています。革製品などのバッグをメインとして生産していますが、将来、さらに技術力を上げて雇用を拡大していきたいと思います。メイドイン南三陸を目指して。



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