「アマゾン・ファッション・ウィーク東京19年春夏」がきょう開幕する。渋谷ヒカリエ、表参道ヒルズを主会場に、21日まで51ブランドがランウェーショーやプレゼンテーションを行う。初参加は20、海外からも10ブランドが参加。冠スポンサー、アマゾンジャパンの主催イベントにも期待が集まる。若手ブランドの発表は前回から入れ替わり、初参加が目立つ。6人に、ショーで伝えたいこと、「ひとこと」アピールしたいことを聞いた。
「マラミュート」小髙真理 女性の強さと柔らかさ
展示会だけでは分からない部分、隠れているディテールなど動きのあるところを見てほしいと考えていました。ニットを強みとしているので、ニットの表現の幅の広さ、ゲージや糸の設定、編み方のテクニックで変わる表情もショーで見ていただきたい。私は〝テクスチャーフェチ〟なところがあって、つるつるしているとか、ざらざらしているとか、そういうところが気になる。ニットに傾倒したのは、プログラミングしてある程度好きに作り出せる、自分でいろんなことができるということがあります。布帛を考えるときもニットの頭。織りの仕組みから考えて、でき上がってみるとニットと似ています。例えば今回使っているプリーツ素材は、リブ編みの発想。初めて使ったデニムも、10オンスのデニムをバイオブリーチ加工し、ニットの柔らかさに近づけました。
ブランドのコンセプトは女性の強さと柔らかさ。柔らかいからこそ強いのが女性の魅力だと思います。ランウェーでならテーマ性の強いものも見せられるので、ショーピースにも挑戦しています。毎シーズン必ず花柄のニットを出していて、そのルーツは祖母が使っていた「フェイラー」のハンカチ。子供のころは少し不気味に見えていた黒地にバラのあの柄が、私が女の人を考えるきっかけになっていたんだと思います。
■ひとこと 「マラミュートの世界観に触れていただけたら幸いでございます」(初ランウェーで緊張しているそう)
17日18時@渋谷ヒカリエホールB
「アオイワナカ」和中碧 エレガンスと芯の強さを
内面的にも経済的にも自立した女性に向けて、着たときに気持ちの上がる洋服を作っていきたい。心掛けているのは、エレガンスを感じさせて、芯の強さも備わっている印象です。素材は日本の技術が生かされたものを使うことが多いです。デコラティブな生地を使いつつ、スタイリングでしつこすぎないように見せる、そのバランスを大事にしています。今回も京都の職人に全面刺繍をお願いしたアイテムを作っていますし、レーザーカットした「ウルトラスエード」は意図した柄がきれいに出ていると思います。
最近、興味を引かれるのは、恵比寿で出会った花屋さん。オーナーの考え方が好きです。自分の子供のように花を育てる生産者のことを考えると売れ残って捨てるのは悲しいと、通常は捨ててしまう花を生かした装飾物を作っているんです。
ブランドを立ち上げて、常にプロ意識の強い人に刺激を受けています。形を起こすプロ、縫製のプロ、それぞれに意識の高い方が存在して、洋服ができあがっていくんだと。以前は洋服を作るといっても、どういったデザインのこだわりがあるかを見ていただけでしたが、今は作る過程に興味が沸いてきています。
■ひとこと 「ここまで来れたのは私一人の力じゃない」(アトリエにサポートしてくれる仲間がいるし、たくさんの支えがあってコレクションができている)
15日10時30分@渋谷ヒカリエホールB
「イン」イン・チソン 自分らしさ出して次につなげる
服が売れないからと、最近はみんなシンプルになってしまっています。同じ世代のデザイナーもコレクションには出てこなくなり、ブランドを続けるのは難しい。僕は子供のころからファッションが大好きで、自分のブランドを作りたいと日本に留学しました。ショーは強いあこがれの対象でしたが、今はそういう状況ではないというのが残念です。でも、自分は自分らしさを頑張って出して、次につなげたい。
縁があって、カメラマンとスタイリストの方にいいアドバイスをいただいています。アイデンティティーを大切に、服は文化だからと教えられ、映画やアートやとにかくたくさんのものに触れ、得たものから考え、服作りしています。派手というのとは違いますが、色を強く、通常のイメージとは違う目線で使っているのが僕の特徴。そして、カッティングを工夫し、きれいなシルエットを出すようにしています。女性の服なので自分には合わせられませんが、そこは意識している。
強く影響を受けたブランドもあります。素材作りからステッチ1本までの集中した物作りを知り、もっともっと頑張らなくてはと思いました。どうなるか想像がつかないけれど、初めてのショーは人生で1回きり。頑張ります。
■ひとこと 「ショーは今日、野外で行います。来てください」(雨が降らないように祈っている)
15日19時@文化服装学院
「フミク」林史佳 毎シーズン違った世界を
思い描くのは、現実とファンタジーの間の洋服です。それを直接デザインに置き換えるのは難しいので、キーワードを立てて質感やニュアンスを伝えるようにしています。19年春夏は「明晰(めいせき)夢」。夢を見ながら自分が今どこにいるのか、自分は何なのか、鏡を見つめるように分からなくなるような感覚を、雨上がりの湿気を帯びた空気を反映して表現しました。邦画の「水の女」にインスピレーションを得ています。
一つのテイストに固執するのではなく、毎シーズン違った世界を見せたい。好きなブランドの一つ、英国の「ミーダム・カーチョフ」のように変えていきたい。ファッションだけでなく、音楽や建築など異なる分野をからめたクリエイションにも取り組みたいです。身近なところでは陶芸に興味があります。服作りの延長で、お皿や箸置きなど暮らしに関わるものを揃えられたらと。本もやってみたいですし、そういった即興性は大事かなと思います。
■ひとこと 「しっかり8時間寝ましょう」(7時間でも短く最高のパフォーマンスができないらしいので、自身も心掛けている)
17日10時30分@渋谷ヒカリエホールB
「コトハヨコザワ」横澤琴葉 1回しかできないもの作りたい
自分は全てに対してニュートラル。服を作ることとご飯を作ること、休みの日に出掛けて楽しむことがフラットにつながっていて、ふとしたことがインスピレーションになっています。コレクションはイメージ作りが全てと言ってもいいほどで、ルックブックの撮影などに重きを置いています。何もないところから新しいものを作るのではなくて、なじみがあるけれど見たことのない表現、不思議な気持ちになるような組み合わせを考えるのが好き。
今回のショーでは新しいラインも見せます。古着のカスタムなど、一点ものというより1回しかできないものを作ろうと。古着を使うとそれ1回だけですし、ハサミを入れたら元には戻りません。そんな個体差があるものに引かれる。デザインの発想など自分の訓練にもなりますし。もうそんなに新しいものを作らなくてもいいのでは、とも思います。目の前にたくさんあるんですから。100年後は、資源がなくてもやりくり上手な人がおしゃれの最先端かもしれません。怖いですね。でも、大手が絶対ということではないから、小さいところはチャンスかもしれません。
■ひとこと 「悔いのない毎日を過ごしましょう」(ショーをすれば記録に残るかもしれないが、残らない毎日も大事。今は今しかない)
17日15時@渋谷ヒカリエホールB
「アカリミヤズ」宮津明理 生きているエネルギーにフォーカス
女性のしなやかさや美しさを掘り下げつつ、生きているエネルギーを感じるような服作りに取り組んでいます。ピンクなど柔らかい色を使うことが多いのですが、波のうねりを感じさせる切り替えを入れたり、ハリのある素材を使ったりして立体的な変化を出すことを心掛けています。
日本人としてのアイデンティティーもデザイン要素になっています。ファッションの時代でいうとアールデコが流行した1920年代のモードスタイルが好きで、それは日本の伝統に通じているからだと思います。当時のドレスのシルエットにはきものの真っすぐなラインが反映されていて、「私は日本人である」と強く感じるんです。
現実主義ではなく、あったらいいなと想像する楽園や永遠といった価値観に向き合っている面もあります。「命」を表現したいと考えるのは、試練も受け入れつつどう強く生きていくか、そのエネルギーにフォーカスしたいからです。
両親の影響を受けて小さい頃からギターが好き。デザイン画を描くときも、気分転換に弾くと気持ちが乗ってきます。
■ひとこと 「日本人ってハッピーだなって思います」(日本人は恵まれたところで生きている。今は本当はすごくいい時代)
15日15時30分@渋谷ヒカリエホールB