松井誠剛さんが手掛けるファッションブランド「アベリア・エドワード・ゴーチャ」。21年に本格始動し、現在は国内外15店以上のセレクトショップで扱われている。
出発点は〝拾い物〟
大阪文化服装学院でパターンを専攻した。コロナ禍で時間ができたことを機に本格的に動き出し、就職活動は一切せずにブランドを始めた。もともと働くことへの関心は薄かったという。
学生時代は、路上に落ちている物を拾ったり、フリーマーケットやリサイクルショップを巡ったりしていた。周囲の服飾学生が当時人気だったセレクトショップに通い、同じようなブランドをこぞって着る流れとは距離があった。
ビンテージにも興味はなく、古着屋にも通わなかった。誰かによってすでに価値が担保されている物よりも、誰も気に留めないものの中から、自分だけが反応する何かを見つけることを楽しんでいた。その感覚が服作りの出発点になっている。
シーズンごとの明確なコンセプトはあえて立てない。自分が何に引かれているのかを制作の過程で見極め、その延長線上で服を形にしていく。
着想は街で撮りためている人物スナップから得ることもある。撮影を重ねる中で、ある種の人物像に繰り返し目が留まることに気づいた。ファッションを強く意識して装っているわけではない。だが、長年生きてきた人の染みついた所作や着こなしの中に、静かににじむ品のようなものを見いだした。
街のスナップを着想源にするデザイナーは珍しくない。だからこそ、引かれている対象に「クリーンマン」と名付けることで自分だけが見ているものの輪郭をはっきりさせた。「自分以外の人が見れば、ただのおじさんが写っているように見えると思う」と笑う。松井独自のイメージから生まれたのが「クリーンマンジャケット」だ。おじさんが着ていそうなブルゾンをイメージしながら、ファスナーの使い方など細部に上品さを加えた。
自然に進む道へ
展示会に訪れるバイヤーに対しても考えがある。「セレクトショップというものがそもそもなかったとしたら、どういう店をやるのか。そういう発想でやっている人とやりたい」と話す。その一つが大阪のショップ「ルームプティジュリアン」だ。ブランドについて独自に言語化し、SNSで発信している。その内容をもとに、新聞紙面を模したペーパーを共同で制作した。アベリア側が監修し、展示会などで配布した。

先日の撮影で訪れたニューヨークでは、個人的に気になっていた店に立ち寄ったところ、スタッフがブランドを知っていたという。営業目的ではなかったが、取引につながる可能性も出てきた。「フリマでディグってた時と同じような感覚。目標とか計画とかはあえて立てないようにしていて、できるだけナチュラルに、面白い方向に進んでいくのがいい。ブランドがどこまで行くのか、自分も楽しみです」
