海外市場を切り拓く!(講演後記)(阿賀岡恵)

2015/12/16 00:00 更新


少し前になりますが、台東区のデザイナーズビレッジが主催するビジネスセミナーで、起業、独立、ブランド、海外ビジネス等について講演をさせていただきました。

当日は定員50名のところ100名を超える方々にご聴講いただきまして、最後は立ち見の方も出てしまい満員御礼でした。ご来場くださいました皆様、本当にありがとうございました!

さて、今回はセミナーで多く寄せられた質問や、それに対して私がお話させていただいた事などを少しご紹介しようと思います。

主に寄せられた質問は、やはり海外ビジネスについてでした。今回は、弊社のような無名で小さなブランドAYAME SOCKSが自力で海外に売り込んで行く為には、という話です。

ビジネスの規模感が違うと全く当てはまらないと思いますし、私は先生でも何でもなく、自分の経験を話すことしかできないので、これが正しいということでは無いのですが、ご参考程度に読んでいただけたらと思います。

私は、基本的には、お金とやる気さえあればどんな人にもチャンスがあると思っています。

お金=持久力、やる気=情熱です。両方バランスよくあったほうがいいと思いますが、前者の方は、若かったりビジネスが駆け出しの頃だと中々難しいですよね。私もご多分に漏れずそうでしたので、その辺は若さと瞬発力でカバーしてきたつもりです。以下は駆け出し時代の、創意工夫の轍(わだち)です。

■海外での営業方法

海外展示会に出展する以外では、どんな営業をしましたか?という質問が多く寄せられました。

最初っからふんだんに資金があれば、名のあるエージェントと契約するのが一番だと思いますが、金もコネも無ければ自分でやるしかないですよね。

私の場合は展示会が始まる前に、入れたいお店に一件一件コンタクトを取りました。これはその時にアプローチしたお店のリストです。メール、電話、突撃訪問、あらゆる手を駆使してローリング作戦です。


 
セールスリスト
 

2009年頃の懐かしい思い出ですが、100件以上トライしてみて返事をくれるのがその半分、好意的に受けてくれるのがそのまた半分、展示会に来てくれたのはそのまた半分以下という感じでした。

色々やってみて、結果、オーダーを落としてくれたのが2件。100件あたって2件です。たった2件かもしれないけど、自分では大収穫だと思っていて、というのは、その数字よりも過程が大事だと感じていたからです。

冷たくあしらわれたり、突っ込まれて上手く返答できなかったり、興味を持ってもらえて単純に嬉しかったり。こうして書くのは簡単ですが、その過程では、自分の情緒や思考がかなり大きくアップダウンしますし、その度に「考える」という機会に恵まれます。根性論とかあんまり興味ないですけど、やってみて初めて腹に入る事も沢山あると思います。

■現地エージェントを見つける

いいエージェントはどうやったら見つけられるのか?という質問もかなりありました。

これは、あれこれ活動しているとそのうち様々な国のエージェントからお声がかかります。私の場合は、ブランド設立の2007年にミラノで受けた雑誌のインタビュー記事を現エージェントのC53(英国)が見て、その後すぐにメールで問い合わせてきてくれて、それがきっかけです。

多分、小さな小さな記事だったでしょうし、当時、彼もトミーヒルフィガーUKの社員としてBBB(バルセロナの大規模展示会)に行っていて、そこで偶然その雑誌を手にし、ちょうど独立を考えていた時期だったみたいで、これはイケる!と思ったらしいのです。

AYAME SOCKSの海外エージェントC53のマシュー。以前、繊研新聞さんに取材してもらった時の記事です。

 

 

 

その人の熱意や能力を知るには実際に働いてみないと分からない部分もありますが、信頼し合って共に働く為に大切なことは、自分からどう働きかけるか、という事と、相手の熱意にどう応えるか、という事だと思います。

いい加減な事をしてくる人には、ついいい加減な対応になってしまうのと一緒で、真剣に頑張っている人には、その人の為に自分も頑張ろう、と思うものです。それは人間誰しも同じで、国籍とか言語とか全く関係ありません。自分が足りていないなと思えば、勉強しようという気持ちも湧いてきます。

人間関係って何でもそうで、いいバイブスが出ている人からは、ものすごくプラスの影響をもらえます。パートナーになるエージェントとは、人間性の部分をよく見極め、少しずつ信頼関係を築きあげていかなくてはならず、常に根気や努力が必要です。

私も7年間一緒に働く中で、幾度となく衝突してブチ切れたり、その度に投げ出したくなったりしていますが、決してあきらめず、納得がいくまでやり合います。ですので、最初からいいエージェントを見つけようと言うよりも、互いに研鑽し合って「良い」エージェントとブランドになっていくのが本筋だと思います。共に成長する事は、可能性を秘めた若さの特権であるし、ブランドビジネスの醍醐味だと思います。

■語学の問題

語学を習得すると、あらゆる面でコストカットできます。経費節減したいなら、自分が話せるようになるのが一番です。

難しい契約書を交わす時は別として、話さなきゃいけない内容はせいぜい、数量、金額、納期、送料の事ぐらいと決まっているので、海外展示会に出展するぐらいならそんなに高度な語学スキルは必要無いと思います。明るく元気にSay hello、それと自分の商品説明のセリフを覚えておけば、中学レベルの英語でほぼ問題ありません。

かく言う私も10年前は全く英語が話せませんでした。別段英語が得意だったわけでもなく、学位ある海外留学経験があるわけでもなかったもので、いわゆる典型的な日本人の「読み書きできるけど話せない」レベルでした。

目安で言うとTOEIC450点ぐらい。とてもじゃないけど人に言えるスコアではありませんでした。ただ、今後グローバルに仕事をしていきたい(生きたい)と思っていましたし、これから自分のブランドを海外に売り込んで行こうという中で、ここは絶対に避けては通れないと思っていました。

どうやったら上手く話せるようになりますか?と、これも結構よく聞かれます。これはもう「決してあきらめないこと」、これに尽きると思います。この10年、モチベーションは上がったり下がったりでしたが、とにかく続けること。

英会話もあらゆる学習方法を試しましたし、英文書類も読むし作るし、メールも書く、電話もする。商談の場で上手く言えなかったセンテンスは、スムーズに言えるまでお風呂につかりながら練習する、等々。

一番効いたなと思うのは、やっぱり実戦の商談です。特に、お金の交渉や回収にまつわるエトセトラ。これはかなり語彙も増えましたし、表現力も向上したと思います。やっぱりねー、お金の事は必死になりますもんねー(笑)。

そうやって長い期間をかけて一進一退、ゆっくりと階段を上るように上達していって、ふとした時に突然、相手の言うことが分かるようになり、自分の言いたい事も8割ぐらいは言えるようになっていました。

今年の春、十数年ぶりに、特に勉強もせず受けたTOEICでは、かつてよりスコアが300点ぐらいアップしていました。もうすっかり英語を使うことが日常になっているので、最近は勉強する事はなくなりましたが、800点越えるまであともうちょっと頑張ろうかな。

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と、セミナーではこんな事をお話させていただきました。こうして書くと、効率がいいとは全く言えない動きですね。でもそれでいいのです。急がば回れ、って事なのだと思っています。私はその過程を楽しんでいて、これらは全て人生の豊かな彩りになると信じています。

機会があったら其々の事をもう少し噛み砕いて書いてみようと思います。それはまた別の時に!

AYAME SOCKSオフィシャルInstagram、毎日更新中!

AYAME_SOCKS Instagram


気鋭の靴下ブランドAyame’の活動記録。現在年2回、東京、パリ、ニューヨーク、ロンドンにてコレクションを発表、Made in Japanの靴下を世界に発信中 あがおか・あや/Ayame’socksデザイナー/桑沢デザイン研究所卒/2007年Ayame’設立



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