【トップインタビュー】旭化成株式会社 代表取締役社長兼社長執行役員 工藤幸四郎氏(PR)

2023/12/04 00:00 更新


 旭化成は22年5月に創業100周年を迎え、次の100年に向けての第1歩となる3カ年の中期経営計画を22年度からスタートした。石油化学事業やバッテリーセパレータ事業といったマテリアル領域が苦戦し、ここまでは厳しい前半となっているが、「ポートフォリオ変革」と「生産性向上」の両輪を回し、未来の成長に向けた企業の変革をさらに進める構えだ。繊維事業出身で、22年4月に社長に就いた工藤幸四郎氏に中計の進捗について聞いた。

マテリアル領域のポートフォリオ変革は急務

 22年4月に社長に就任し、マテリアル領域の「ポートフォリオ変革」と「生産性向上」を掲げました。この二つのテーマは、表裏一体の関係にあります。成長性の高いところにリソースを重点配分することで、結果的に従業員1人あたりの生産性も上がってきます。DX(デジタルトランスフォーメーション)活用や働き方改革による生産性向上も進めますが、ポートフォリオ変革を通じて生産性を高めていくことが最も大事なポイントだと考えます。

 22~24年度の中期経営計画「Be a Trailblazer」がスタートして1年半になります。事業環境の厳しさもありましたが、それ以上に市場の動きや流れに対するわれわれのアクションが後手に回ったとの反省があります。当社は繊維から始まって事業を多角化してきた歴史があり、同時にポートフォリオ変革を絶えず続けてきました。苦戦しているマテリアル領域では特に石油化学関連で、カーボンニュートラル技術や高付加価値化への転換の可能性を模索しつつ、同時に他社との共同事業化や場合によってはベストオーナーの観点で事業撤退も検討します。

事業ポートフォリオを変革し、価値創出につなげる

〝アニマルスピリット〟 で背中押す

 石油化学やセパレータなどマテリアル領域が打たれていますが、中計で当初掲げたポートフォリオ変革と生産性向上にこれまで以上に力を注ぎ、方向性は変えず実行していく考えです。

 特にこれからの成長をけん引する10の領域を「GG10」として強化しています。中計3カ年累計で1兆円もしくはそれを超えるぐらいの投資をしようと考えていますが、このうち6割をGG10に集中的に投じる構えです。同時にGG10の中でも優先順位をより明確にし、ヘルスケア、デジタルソリューション、バッテリーセパレータ、水素関連にリソースを重点配分していきます。

 就任以来、〝アニマルスピリット〟という言葉で挑戦する気概を訴えていますが、社員も「変わらなければ」という思いを強くしてくれています。新しい未来を築くためにと、会社の成長や社員の成長に向けて背中を押しているところです。

歴史を見つめ直し、ベンベルグ再生へ

 繊維事業については、キュプラ繊維「ベンベルグ」工場で昨年4月に火災がありました。コロナ禍を脱し、ベンベルグは昨年、今年と大きな引き合いがありました。さらに輸出比率が高いため円安は大きな追い風となるはずだったのですが、そのタイミングで火災を起こしたことは痛恨の極みです。

 90年以上の歴史がある事業で、工場長など現場も重い責任を背負って動かしてきましたが、もう一度歴史を見直し、何が自分たちに足りなかったのか、二度とこうしたことを起こさないためにどうすべきか見つめ直す機会となりました。お客様にベンベルグの再生プランについて丁寧に説明して回ったところ、われわれが想像した以上に受け入れていただき、「頑張れ」とのエールをもらいました。糸を十分に供給すべく、いま必死になって再建を進めているところです。スパンデックス「ロイカ」は紙おむつの市況低迷で厳しい環境にありますが、安定したビジネスを築けており、想定したラインへ業績も回復しています。

再生への歩を進めるベンベルグ®工場

米セージの強み生かす発想で

 自動車内装向けが柱の人工皮革「ディナミカ」は、22年に立ち上げた4系列目の生産ラインがすでにフル稼働となっており、依然として生産タイトな状況が続いています。18年に買収した自動車内装材大手の米セージの販売力は高いものがあり、欧州が厳しい中でも柔軟に対応できています。

 ディナミカは次の投資についても真剣に考えています。セージは人工皮革、合成皮革、ファブリックを使い分け、どのようなカーシートが売れるのかを先取りしてお客様の要望に応えるいわばプラットフォーマーです。素材メーカー発想だとディナミカを拡販しようと考えますが、セージが持つプラットフォーマーの目線で、自動車内装材として「合成皮革を強化するべきなのか、ディナミカを強化するべきなのか」などをしっかり考えます。

 ナイロン66「レオナ」繊維は原料高騰で収益面はここ1年厳しい状況ですが、タイヤコードの需要は安定しています。主力のエアバッグはベトナムの織布工場が24年稼働に向けて着実に準備を進めており、先行したエアバッグ縫製も来年にかけて増販が期待できます。今年後半から来年に向けて量が増え、さらにその先も見えてくる状況です。

 一口に繊維といっても衣料だけでなく、資材分野など幅広い応用の可能性があります。当社のヘルスケア領域で展開するウイルス除去フィルター「プラノバ」やガラス繊維などは繊維技術から出てきたものですし、「ハイポア」のような膜技術も一部は繊維から来ています。繊維技術はユニークできわめて先進的です。技術の横ぐしも通しながら、繊維の新しい可能性も追求していきたいと思います。

23年春にスエード調人工皮革のブランド名をDinamica®に統一した


【profile】82年 旭化成工業(現旭化成)入社、08年 旭化成せんいロイカ事業部長、13年 執行役員兼企画管理部長、16年 旭化成上席執行役員兼繊維事業本部企画管理部長、19年 常務執行役員兼パフォーマンスプロダクツ事業本部長、21年6月 取締役兼常務執行役員、22年4月 代表取締役社長兼社長執行役員



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企画・制作=繊研新聞社業務局



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