【21年春夏パリ・コレクション】シャネル フランス映画へのオマージュ

2020/10/09 11:00 更新


 コロナ第2波によりパリ圏内が警戒最大化ゾーンに移行された翌日、緊張の高まる中「シャネル」と「ルイ・ヴィトン」のフィジカルショーが予定通り開催された。二つのメゾンはそれぞれパリジャンになじみのある場所を会場に、全く対照的なコレクションを発表。パリ・ファッションウィークの最終日に驚きを与えた。

(写真は大原広和)

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〈フィジカル〉

 雨雲を割いた束の間の青空。眩しい光が差し込むグランパレの真っ白な空間に、ハリウッドサインのようにそびえ立つ、Cではじまる六つのボード。巨大な映画スタジオセットを舞台に、シャネルのショーが始まった。アンナ・カリーナ、ジーン・セバーグ、デルフィーヌ・セーリング、ジャンヌ・モロー、ジャンリュック・ゴダール、アラン・レネ、ルイ・マル。60年代にヌーベルバーグを起こし、メゾンのミューズ(助言者)でもあった女優たちをイメージソースに、ヴィルジニー・ヴィアールはシャネルの若々しい女性像を描く。ディレクターチェアに腰掛けた500人の招待客を前に、フォトコールのポーズをとるモデルたち。「スタート!」の一声で、シャネルサインのボードから映画のシークエンスのように、軽快でリラックスしたワードローブが次々と現れる。


(パリ=松井孝予通信員)

〈デジタル〉

 シャネルの会場となったグランパレのセットはいつになく質素で、ハリウッドサインをかたどったシャネルの文字と白い砂だけのように見える。しかし、そのシャネルの看板はデジタル画像と組み合わされ、パリ郊外のサクレクール寺院の裏側の山に設置されているかのような演出になっている。フランス映画へのオマージュを切り口にした新作は、快活で若々しいスタイルが軸になる。ブランドのシグネチャーともいえるファンシーツイードを使ったジャケットやコート、クラシカルなトリミングジャケットが充実している。しかし、そんな伝統的なアイテムも淡いブルーのデニムパンツやショートパンツを合わせることで、アクティブな雰囲気に仕上げていく。フェザー刺繍のトップやビジュートリミングのセットアップなど、このメゾンらしいハンドクラフトの技術を生かしたアイテムももちろんある。しかし、カットワークレースのドレスやバックに布を流したベアトップドレスなど、作り込みながらもどこかシンプルに見える。そんなラインナップに彩りを添えるのは、ネオンサインのような色使いのシャネルロゴプリントドレス。映画予告のカウントダウンの数字を、シャネルのナンバー5の数字とシンクロさせてプリントにのせるセンスも面白い。


(小笠原拓郎)



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