21~22年秋冬NYコレクション 性差がより不透明になるメンズ

2021/02/19 06:28 更新


 21~22年秋冬コレクションを発表するメンズブランドで、ウィメンズも見せるブランドが増えた。「ニューヨーク・メンズデー」のグループに入っている11ブランドのうち、5ブランドがジェンダーレスまたはジェンダー・ニュートラルを名乗る。メンズとウィメンズの境い目がつけにくくなっている。デジタルならではの表現方法やブランドストーリーの見せ方に、デジタルも悪くないという思いとやはり実物を見たいという思いが交錯する。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

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 ヴィクター・リは映画「ブロークバックマウンテン」に着想し、ワイオミングの牧歌的な風景やビンテージのポストカードをテーラードスーツにプリントした。デニムはブリーチと洗いで表情をつけたり、同系色のジャガードとドッキングしたり。デニムに入れたモノトーンのタイダイは大きなスケールで、インパクトがある。今シーズン、初めてウィメンズも見せた。デニムに白のダブルステッチをきかせたクロップトジャケットとスカートのセットアップ、ウエストをドローストリングで絞ったシャツドレス、ブランケットのようなチェックのコートがある。

ヴィクター・リ

 ジェンダー・ニュートラルのストールン・ガーメントは、動画の中でモデルをデジタルでデフォルメしながら見せた。ゲームやアニメ感覚で、デジタルだからこそできる見せ方だ。服はレインボーカラーをのせた透けるTシャツ、白地に赤いハートを大胆に入れたプルオーバー、黄色と黒の大きめの千鳥格子のコートなどポップな90年代調。蛍光黄緑のキノコをぶら下げたチュニックもある。英国のセントラル・セントマーチン美術大学を17年に卒業したジャンウー・パークが韓国に帰国後始めた。ブランド名は、卒業制作ショーの作品が数時間後に盗まれたことに由来する。

ストールン・ガーメント

 ジェンダーレスのカ・ワ・キーの動画は、狭い部屋でモデルたちが不気味に笑ったり掃除したり怒りをあらわにしたりするシーンをつなげた。自宅待機中にテレビで目にしたウイリー・ウォンカ、モイラ・ローズ、ピーターパンなどのキャラクターにヒントを得たという。服はいつもと同じ、楽しくてカラフル。毛足の長いモヘア、凹凸の強い質感を出したカットソーなど、ふわふわした素材が心地よさそう。フリルを斜めに流したシャツ、異なるチェックを斜めにはぎ合わせたセットアップなど、バイヤスディテールも多い。

カ・ワ・キー(写真=Jarno Leppanen)

 フェデリコ・チナは動画の真ん中を区切り、男性モデルと女性モデルがからだ半分ずつ映るように見せるなど、デジタルならではのジェンダーレスな見せ方をした。服はシンプルなソフトテーラーリング。ブルーや明るいピンク、オレンジにイタリアのロマーニャ州のロマンチックな気分を入れた。ブドウの柄を大きく編み込みで入れたバイカラーのセーター、植物を線描きで入れたシャツもシンプルだがしゃれている。イタリアのチェゼーナをベースとするフェデリコ・チナが19年秋冬から始めたブランドで、ニューヨークで発表するのは初めて。

フェデリコ・チナ

 都会の交差点、錦ゴイの泳ぐ池のある日本庭園、日本の古い町並みなど、クオンの動画にはさまざまな風景が現れる。冒頭にはアルバート・アインシュタインの名言「昨日から学び、今日を生き、明日に希望をもとう」を入れた。インスピレーション源は、時代が大きく変わった江戸時代末期。丹前を思わせる打ち合わせのジャケットに羽織ったジャケットは、きものをほうふつとさせる織り柄を全面に入れ、スエードのシャツ襟を付ける。ブルーと白のニードルワークを前身ごろに張り巡らしたフード付きブルゾンもある。生成りのフィッシャーマンズセーターを切り刻んでパッチワークしたジャケットは、もこもこ感が可愛い。

クオン(写真=Daiki Endo)

 1年前のファッションウィークで初めてプレゼンテーションで見せたスタンは、古いキルトを使って服を作るブランドストーリーを動画で見せた。ノスタルジックなBGMと笑顔を見せる登場人物たちに、ほのぼのとした希望が感じられる。キルトだけでなく、ビーバークロスの大きなチェックのジャケット、フリンジでトリミングしたフード付き半袖シャツ、別色で織り柄を部分的に入れたジャケットも見せた。

スタン(写真=SI LI)


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