【2019年・新時代をどう生きるか】パルグループホールディングス 井上英隆会長

2019/03/12 00:00 更新



 パルグループホールディングスは、独自のパルマップをもとに、中長期的な視点も重視しながら多くのブランドを全方位で展開し、平成の間に大きな成長を遂げた。社員をフェアに評価し、現場に思い切った権限やチャンスを与えることで、人材も成長・活躍している。今後はこうしたパルが持つ強みを生かしながら、大型ブランドの育成に注力していく。

中長期的な視点も重視

―平成、そしてパルが成長した背景を振り返ると

 平成を大まかに振り返ると中所得層が崩壊し、低所得層と高所得層との二極化が進みました。マーケットは低プライス化が進み、ピラミッド型から下太りのひょうたん型へと変わっていっています。

 当社はつねに時代の流れや変化を予測し、様々な手を打ちながら成長を続けて来ました。99年2月期の売上高は102億円。01年のジャスダック上場、06年の東証一部上場を経て、18年度(19年2月期)は売上高1300億円超と、20年足らずで売上高は10倍以上になっています。

 約30年前に独自で様々なブランドのデータを集めて作成したパルマップを指針に、戦略を推進して来たことが、成長を大きく支えているのだと思います。トレンドは12年周期で一巡するというパルマップをもとに、中長期的な視野でのブランド開発・育成を繰り返した結果、現在はパルマップ上に約50の自社ブランドがバランス良く分布されるようになりました。

 どんな時代でも最大公約数が狙える、つまり安定した売り上げが出せる企業体になった訳です。現代風に言えば、パルマップというAI(人工知能)を生かし、企業としてサステナビリティー(持続可能性)を実現した、と例えられるのかも知れません。

18年10月に原宿にオープンした大型路面店「ベースヤードトーキョー」。主力ブランドを複合するとともに、新たなコトやモノも発信している。

理念はみんなの幸せのため

―パルの人材に対する考え方や活用方法は

 「社員みんなの幸せのため」をパルグループの経営理念に、みんながやりがいを感じながら成長出来る社内環境を整えています。社員それぞれが正当に評価される仕組みはもちろん、「拝啓社長殿」という直接提案制度を用意し、トップにプレゼンをして自分のブランドが実現出来るパルドリームもあります。現場に徹底した権限委譲を行い、各自に経営者感覚を身に付けてもらおうという人材育成も理念に沿ったものです。

 18年9月には変形労働時間制を導入しました。1日に8時間勤務するというこれまでの概念を捨て、日によっては4時間という風にメリハリの利いた働き方が出来るようになりました。子育て中の女性が働きやすくなったり、自分のための時間が持ちやすくなった、と好評です。人材獲得の面でも店長の負担が軽減するなど、効果が現れています。

 導入後は繁忙期と閑散期の人材配置を従来よりも加減している訳ですが、売り上げは導入前と変わっていません。日頃からお世話になっているディベロッパーさんの中にも、営業時間短縮を検討されているところがあります。社会で働き方改革が進む中、ぜひ実現して欲しいと思います。

毎年開く全社大会では、様々な部門の上位入賞者を選んで表彰している。写真はインフルエンサースタッフ部門で選ばれた6人の表彰者。

アパレルでも大型ブランドを

―これから重点的に推進していくことは

 低プライス化が進む流れはまだ続きます。このため、「コロニー2139」「ディスコート」「チャオパニックティピー」の進化・拡大に注力します。コロニー2139だけでなく、ディスコートやチャオパニックティピーも、ライフスタイル提案や大型店開発を本格化します。4~5年の間に3ブランド合計で売上高1000億円を目指したいです。

 大型ブランドを拡大するうえで、自社の切り口をはっきり打ち出していくことは不可欠です。例えば、300円中心の雑貨業態「スリーコインズ」は、ファッション性を生かした提案力を強みに、200億円を超える大型ブランドになっています。アパレルを軸にする大型ブランドでも、パルらしい個性が光る提案を重視していきます。

 18年秋には、自社ECサイトと実店舗のポイントを共通化しました。ようやく当社のオムニチャネル戦略も本格化していきます。店舗とECの相互利用を重要視しながら、双方の拡大を図ります。

株式会社パルグループホールディングス
井上 英隆氏

PAL GROUP HOLDINGS

URL: http://www.palgroup.holdings

(繊研新聞本紙19年3月1日付)



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