19年春夏パリコレ カットワークで軽快な女性らしさ

2018/10/03 06:28 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19年春夏パリ・コレクションに、女性らしさを強調した素肌を見せるディテールが広がっている。胸元をカットしてチューブトップやブラトップと重ねて複雑なカットワークを作る。素肌をのぞかせながらスポーティーで軽快なラインに仕上げるのがポイントとなる。

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 ヴァレンティノはマラケシュのリラックスしたムードと柄を背景に、ハンドクラフトの技術を散りばめて見せた。ショーの冒頭はいつになくストイックな黒一色のシルクのドレス。ダークで重たいイメージの黒であるにもかかわらず、オフショルダーのドレスは背中にふわりと空気をはらむパフィーなシルエット。

ヴァレンティノ
ヴァレンティノ

 続くフェザーを飾ったロングドレスやプリーツのマキシドレスも軽くたおやか。リラックス感とエレガンスを背景に鮮やかな色へと移っていく。タヒチを描いたゴーギャンやマティスの絵画から着想して、発色のきれいな動植物の柄をのせた。ベルベットにプリント生地をアップリケしたり、繊細なビーズ刺繍を加えたり。オートクチュールメゾンならではの奥行きのある柄を表現する。

ヴァレンティノ

 繊細な刺繍のシャツドレスやプリ―ツのミニドレスに、フェザーを飾った大きなストローハットとフラットシューズでゆったりと歩く。アーティストたちがゆったりした時間を過ごした「エスケープ」をテーマにしたコレクション。マクラメ編みのサンダルやエスパドリーユなどフラットシューズに羽根飾りで、繊細でリラックスしたムードをのせる。

ヴァレンティノ
ヴァレンティノ

 夜の裁判所の入口の暗闇に、「ジバンシィ」の文字が光となって浮かび上がる。その青白い光の元を目指して真っ黒な裁判所の中を進んでいくと、床も壁も布に覆われたショー会場にたどり着く。ジバンシィはトップをボトムの中にたくし入れるタックインのディテールを軸にしたシャープなラインのレディスとメンズを見せた。クレア・ワイト・ケラーにとってレディスとメンズは合わせ鏡のような関係。その両面が刺激しあって、ジェンダーを超えた新しいニュアンスを探ろうとしている。

 ライトブルーやピンクのプリーツドレスはオートクチュールのテクニックを背景にしたもの。ミリタリーディテールのシャツやボディースーツのようなフェミニンなアイテムもハイウエストのパンツにタックインして着る。カットワークや布をねじったディテールなど、まるでハーネスのようなアイテムでデコルテや胸元を見せる。

ジバンシィ

 かといって、決して官能的ではなく、あくまでシャープなライン。ケープレットのようにショルダーだけを包むアイテムもドレスのアクセントとなる。花のプリントは流れるようなラインを描いてグラフィカルに見える。メンズはシンプルでシャープなラインが際立つ。レザーのライダーズベストとバイカーパンツのセットアップ、シルバーのメタリックピースを重ねてヘリンボーンのような柄を作るブルゾンやパンツを揃えた。

ジバンシィ

 ステラ・マッカートニーは、軽やかさとエネルギーをはらんだラインを飾らないムードで見せた。ワークやランジェリー、マスキュリン、スポーツといった得意の要素を組み合わせながら、デザインをそぎ落としてシンプルに仕上げていく。甘さも控えめ。潔いほどにすっきりしている。

 そんななか、目を引いたのはミニ丈のドレス。伸縮性の高そうなジャージーが体に吸い付き、ハイウエストからフレアが波打つ軽快なシルエットは、バレエのレオタードを連想させる。足元はバレエシューズのようなフラットのレースアップ。エアリーなフォルムの縦長シルエットが多かったここ数シーズンと違って、若々しいムードが漂っている。

ステラ・マッカートニー

 リラックス感のあるVネックセーターには花柄のサイクルパンツ、タイダイのトップにジップディテールでフォルムを作るトレーニングウェア風のセットアップなどが充実する。大きめのボリュームのパンツスーツやジャンプスーツも多い。クリームイエローやペールピンク、ミントグリーンなどの淡い色で包み込んだ。

 サカイのミックススタイルが、さらに複雑になった。ワーク、ランジェリー、テーラード、ミリタリー。ブランドを象徴するこれらのさまざまな要素を部分的に解体し、装飾を加えてミックススタイルを完成させた。前後左右の布の動きや量感が全く違うアシンメトリーなルックに仕上がっている。

 フォーマルなボザム飾りのシャツとピークトラペルのジャケットを組み合わながら、片袖はカットオフされ片袖はケープ状になる。片襟には立ち上がるシャツやレースの装飾、ショートパンツのバックはフレアスカートのようだ。一見、どのように重なりあっているのか分からない。上に羽織ったコートが脱げかけているようでもあり、重ねたスカートがぶら下がっているようでもある。いろんな布が身頃のさまざまな部分で揺れている。それらを白黒や同系色、同柄で統一感のあるルックに仕上げた。

サカイ

(写真=大原広和)

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