19SSロンドン・メンズ マーティン・ローズ

2018/06/12 06:30 更新


 【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】19年春夏ロンドン・メンズコレクションは、ここ数シーズンに比べてこぢんまりとしたスケジュールになった。若手の有望株「クレイグ・グリーン」はフェレンツェのピッティ・イマージネ・ウオモでの発表となり、「ジェイ・ダブリュー・アンダーソン」はすでにレディスコレクションでメンズも一緒に見せるようになった。こうした状況を背景に、ロンドンに訪れるバイヤーやジャーナリストの数も減っているようだ。

 しかし、ファッションビジネスにとって常に求められるのは、時代の閉塞(へいそく)感を打ち破る新しい才能。ロンドンの持つ若々しいインディペンデントの力がどうなっていくのか。新しい才能の登場に期待が高まる。

90年代レイブ世代のワードローブミックス マーティン・ローズ

 マーティン・ローズのショー会場にたどり着くと、そこはカムデンタウン近郊のU字型のアパートメント。アパートに囲まれて行き止まりとなる小さな公道を封鎖して、公道をランウェーにした屋外でのショーとなった。道に置かれたパイプ椅子、その後ろには住民の自動車が置かれ、アパートから出てきたたくさんのファミリーが楽しげに道端にたたずんでいる。どこかのどかなムードが漂う中、90年代のマッシブ・アタックの曲がリミックスされるとともに、90年代イメージを背景にしたミックススタイルが次々と現れる。

 レパード柄を切り替えたブルゾンやレパードのハイウエストパンツ、かかとを踏んで履くスクエアトウのビットモカシン、よろけたストライプのパンツにタイポグラフィーのパッチワークシャツ。ボックスシルエットの端正なテーラードジャケットの一方で、ピンクのモーターサイクルパンツもある。

 マーティン・ローズが描いたのは90年代のUKレイブムーブメントを経験した男性が、大人になったイメージ。懐かしいひと昔前のイメージの服をミックスして、切り替えやパッチワーク、タックインといったテクニックで混ぜ合わせていく。曲線の柄をのせたジーンズにサイドに飾ったコンチョの飾り。レザーパンツにはフリンジベルトを垂らし、デニムジャケットはチェックのシャツとカスタマイズされてシャツジャケットのようなアイテムになる。過剰な切り替えの一方で、なんでもないスラックスと白いスニーカーの合わせがナードなムードを作る。

 90年代のズバリでもなければ、エッジの利いた最新のスタイルというわけでもない。しかし、公共の空間で見せる、力の抜けたミックス感がなぜか新鮮に見えてくる。これが、今、乗っているデザイナーの持つ吸引力なのかもしれない。

マーティン・ローズ
マーティン・ローズ
マーティン・ローズ

(写真=catwalking.com)



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