19年春夏ミラノ・コレクション ジル・サンダー

2018/09/20 17:14 更新


 【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】ルーシー&ルーク・メイヤーによるジル・サンダーは、もともと菓子工場だった建物をショー会場に選んだ。朽ち果てたような白い壁にガラスの天窓、ところどころに生い茂る草木を穏やかな風が静かに揺らす。そのノスタルジックな光景を背景に、白やエクリュ、ペールブルーといった淡いニュアンスカラーが広がった。

 春夏はユニフォームを出発点として、自由と規律、欲望と抑制といった対立する要素を混ぜ合わせてモダンなスタイルを目指した。ジル・サンダーらしいミニマルで禁欲的な空気をはらんだボックスシルエット、直線的な肩のラインから落ちる袖には大きなカフスが揺れる。ボンディングやキャンバスの張りのある素材を生かした構築的なラインに、クリースのディテールが折り畳んだ後を残す。ボリューム感のあるシャツにワイドパンツがキースタイル。セーターはざっくりした風合いのほか、女性のヌードをかたどった刺繍がされている。ニットをレイヤードしてカラーブロックのようにしたドレスと淡く透けるブルーのセットアップがハイライト。足元はぽっくりのような厚底サンダルやメタルリングディテールのブーツでまとめた。

 アーカイブをもとにしたクリエイションで、ファーストシーズン、セカンドシーズンと新しいブランディングを進めてきた。クロシェや刺繍のハンドクラフトの技術を生かしたラインは初期のジル・サンダーをほうふつさせるものだった。ここからさらに次のステップに進むべき時期なのだが、今回はそこまで踏み込んだようには感じられなかった。もともとのジル・サンダーの世界がミニマルでストイックなものであるため、そのアーカイブに光を当てながら前に進むためには、カッティングの力が不可欠だ。次のステップに向かうカットは何なのか、このデザインデュオはそこに踏み込まなければならない。

(写真=大原広和)

ジル・サンダー

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