【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子】18~19年秋冬ニューヨーク・コレクションは、ラグジュアリーブランドが旗艦店オープンに合わせてファッションウィークに参加する一方で、ニューヨークを代表するブランドが最後のファッションウィークでの発表となった。パリ一極集中に伴う、ニューヨーク・コレクションの減速を感じさせるシーズンとなった。(写真=catwalking.com、ランディ・ブルック)
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アレキサンダー・ワンはマンハッタンのど真ん中にあるビルでショーをした。この間、ハーレムやブルックリンなどファッションとは縁遠い場所であえて観客を立たせたまま見せるショーをしてきたが、今回はオフィスのようなスペースに全員が着席。ぐっと見やすい環境となった。
そこに登場するのは黒と白、わずかにピンクといった色使い。ワンらしいスポーツやユーティリティーの要素を入れながら、マスキュリンなテーラーリングをシェイプを利かせて官能的に見せる。テーラード襟のミニドレスやベアトップのミニドレスに走るシルバーのジッパー、黒いグローブやリュックにはスタッズが光る。コーチジャケットやシャツにはメタル刺繍のタイポグラフィーがのせられる。
今回がニューヨーク・コレクションでの最後の発表となるが、「アルトゥザッラ」とともにニューヨークの若手ムーブメントを盛り上げてきた彼が、スケジュールから去るというのは寂しい限り。
しかし、インターナショナルなビジネスの広がりを見たときに、ニューヨークのコンテンポラリーと呼ばれる市場の競争力がこの間、急激に落ちているのも事実。ワンはそこからラグジュアリーにシフトしていこうとしたが、やはりクリエイションとプライスのバランスが難しかったと言わざるを得ない。
ブランドスタート時の「こなれて可愛くセンスが良い」コレクションから、大きくブランディングを変化させたことが果たして良かったのか。もちろんそれをしなければ、バレンシアガでのキャリアも望めなかったわけだが、今振り返るとそれも含めてブランドビジネスをデザインする難しさを実感させられる。
