ロンドン・メンズコレクションにおける「シーナウ・バイナウ」の寿命は短かった。昨年はそれを前面にデビューしたブランドや発表直後に発売する一部の新作を目玉にしたショーも相次いだが、今シーズンはコレクションスケジュールから消えた。
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ホワット・ウィ・ウェアは1年前にシーナウ・バイナウでデビューしたナイジェリア系英国人の人気ラッパー、タイニー・テンパーのブランド。頭文字の「WWW」のロゴを付けたクリーンなスポーツカジュアルを基本に、ブランド名の通り今の時代の服をストレートに表現する。今回はシーナウ・バイナウに終止符を打ち、秋冬の新作を見せた。スライダーに丸いメタルリングが付いたジップアップブルゾンやパーカ、テクニカルナイロンのキルティングジャケットと同素材のパンツなどのスポーツを継続しながらも、工事現場作業員や窓ガラス清掃人、露店商といった労働者たちに目を向け、作業員のユニフォームのような鮮やかなオレンジに染めたり、ジャケットの背中心やパンツの脇にリフレクティブテープを走らせたセットアップを揃えた。大きく「W」の文字を斜めに付けたセーターは、労働者たちのワードローブのように編み目が不揃いの手編み風。
2シーズン目のショーを見せたエドワード・クラッチリーは、前回同様にスカート姿の男性や女性モデルも登場させ、性別、時代、国も階級もミックスしたスタイルを打ち出す。パッデッドブルゾンやテーラードジャケットはバルーンシルエットを描くビッグサイズ。ガウンのようなシルクのコートやチャンキーセーターもオーバーサイズで手先が隠れる。東洋にも中近東にも見える古代風のプリント柄には、今どきの絵文字のアイコンが潜んでいる。
ランウェーデビューを飾ったカシミは、さまざまなカルチャーをミックスしながらボリュームのコントラストで見せた。シグネチャーとなるシルエットは、オーバーサイズとクロップトトップの量感のバランス。極端なワイドパンツとショートブルゾンのコーディネートやボリュームたっぷりのチャンキーニットといったアイテムが揃う。コッパーブラウンやカーキ、バーガンディといった落ち着きのある色にエレクトリックイエローでコントラストを付ける。柄は、ネパールやブーダン、インドの生地からイメージしたチェックと温かみのあるブランケットストライプ。
(小笠原拓郎、若月美奈通信員、写真=Catwalking.com)