店はやっぱり劇場ーードラマがあるところに人は集まる(杉本佳子)

2020/12/17 06:00 更新


Medium %e3%83%8f%e3%83%88%e3%82%99%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%83%a4%e3%83%bc%e3%83%88%e3%82%99%e9%9b%bb%e9%a3%be%ef%bc%92

 9月、再開したハドソンヤードが閑散としていて寂しいとお伝えした。ハドソンヤードはそれ以前も、地下にあるスペイン料理のフードコート「リトルスペイン」をのぞけば、多くの客で賑わっているということはあまりなかった。ニーマンマーカスを始め、いくつもの店やレストランが閉店したままという状況は変わらない。しかしクリスマスシーズン真っ最中の日曜日に行ってみたら、今までになく多くの人が訪れていた。

≫≫杉本佳子の過去のレポートはこちらから

 クリスマスシーズンのハドソンヤードの中は、眩いばかりのキラキラしたゴールドの電飾がびっしり!去年はこういうキンキラキンの電飾はなかった。

 透明なエスカレーターの中にも、ゴールドの電飾をいっぱい詰め込んでいる。趣味がいいかどうかは別として、他にない点でインパクトはある。

 気球とヴェッセル(外にあるモニュメント)を背景に写真を撮ることができる通路では、多くの人々が自撮りしたり、家族の写真を撮ったりしている。写真を撮りたくなるようなインパクトのある飾りつけをしたことが、人の流れをつくったのだ。閑散としていても、あえて飾りつけに投資したことが奏功したといえるだろう。

 その人の流れが、小売店の売上高にどこまで直結しているかは定かでないが、H&Mなど一部の店の前には行列ができていた。私自身も、せっかく来たのだからと買い物していった。

 館内の数か所にはピアノが置かれていて、誰でも自由に弾くことができる。コロナ禍においては、誰が触ったかわからない鍵盤にさわるのは気が引ける人が多いのではと思いきや、案外抵抗なく弾いている人たちがいた。「店は劇場」と言われた時代があったが、やっぱり実店舗には「劇場」の要素が必要だ。非日常の空間を楽しめ、時にはそこで自分が主役になれることがわくわく感に繋がる。ネットショッピングが広がれば広がるほど、「その店に来ないと体験できないこと」「そこに行かないと撮れない写真を撮れること」はやっぱりとても重要で、そうしたことを提供することで実店舗に人がくると改めて実感した。

 クリスマスウインドーも、今年ならではの現象がある。メーシーズとバーグドルフグッドマンが、まったく同じ路線なのだ。メーシーズは、THANK YOU NEW YORKやLOVEなどの言葉を掲げている。

 BELIEVE IN EQUALITY(平等を信じよう)というスローガンを掲げているのも、ブラック・ライブズ・マター運動が盛り上がった今年らしい。

 バーグドルフグッドマンはLOVE、HOPE、JOY、HARMONYなどの言葉を掲げている。メーシーズは子供も含めた万人向け、バーグドルフグッドマンはエレガントな大人向けという違いはあるものの、言葉だけをシンプルに打ち出した点は同じだ。機械仕掛けなどの演出をする例年に比べて、予算削減したとしても不思議ではない。昨今の状況を考えたら、致し方ないことは理解できる。メーシーズはコロナ禍でも例年通り、独立記念日の花火と感謝祭のパレードのスポンサーを続けてくれた。ニューヨーカーたちはみんな感謝している。バーグドルフグッドマンはバーニーズ、ニーマンマーカス、10コルソコモなど高級ファッション店が次々なくなった今、残っていてくれるだけで有難い。それでも、このホリデーウインドーにちょっと物足りなさを感じるのは私だけだろうか。

 その点、サクスフィフスアベニューは、例年通りホリデーライトショーを行い、ウインドーディスプレーも今までと同様のものを見せている。サクスフィフスアベニューのホリデーライトショーは数年前に始まった。陽が暮れると、5番街に面した巨大な壁一面でデジタルショーが始まる。コロナで外出をためらっている人たちもこれだけは見たいのか、大勢集まって見物している。劇場もライブハウスもすべて閉まっている状態が長らく続き、ニューヨーカーたちはエンターテイメントに飢えている。たとえ3分ちょっとのショーでも、生で見れることにわくわくするのだ。ニューヨーク市は14日から再び、インドアダイニングが禁止された。閉店するレストランはさらに増えるだろう。犯罪もホームレスも増えている。いつもと変わらないサクスフィフスアベニューのホリデーライトショーは、気分が沈みがちなニューヨーカーたちを励ます力があると思う。

 例年同様に機械仕掛けを入れたウインドーの前にも、多くの人々が集まっている。「コロナ禍でもいつもと同じ」への安心感もあるだろう。特に子供連れは、やっぱり動きのあるウインドーに嬉しそうだ。こうした光景を見ると、実店舗はモノを売るだけの場所ではなく、人々を励ましたり慰めたり喜ばせたりする力があると感じられる。コロナ禍で「モノを売る」以外に何ができるか、どうしたら社会や人々の役にたてるか、店はさまざまな角度から考えてみることが大切と思う。


≫≫杉本佳子の過去のレポートはこちらから

89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ

関連キーワードレポートプラス


Bnr counter agreement
Bnr denshiban

この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事

Btn gotop