〝スマートウェア〟という言葉を覚えているだろうか。導電性を備えた繊維やフィルム、塗料を主に用いたセンシング技術で開発された、服型のウェアラブル商品を指す。繊維メーカーが固有の技術を活用し、ウェアラブル商品を想定した素材や製品を相次ぎ発表したのが約10年前。そのころ初めて開催された展示会「ウェアラブルEXPO」も年を追うごとに関心を高めていった。ところが昨年と今年の2回は服型を主軸にした日本企業の出展はゼロ。ウェアラブル商品の大本命だったスマートウェアの開発はどうなった?
(小堀真嗣)
手軽さが明暗分ける
スマートウェアは「体調の見守り」や「人の動きをデータとして可視化する」など、繊維で実現できることの可能性を大きく広げた。14年に東レとNTTが「ヒトエ」を開発して以降、帝人グループや東洋紡などの大手繊維メーカーが服型を想定した素材や製品を開発した。北陸の繊維産地企業や西陣織の帯工場が祖業のミツフジのような中小企業も、それぞれの技術を強みに開発。各社がこぞってウェアラブルEXPOで披露するという流れが定着した。