スマートフォンを側溝に落としてしまった。降り出した雨で指がぬれ、滑り落ちた。側溝にしっかりはめこまれたふたには隙間があいているが、細すぎて手が入らない。底まで60センチほど。底の見えない穴ならともかく、見えているのに取れない。雨も強まりそう。もどかしさばかりが募る。
中国・上海の60日以上におよぶ封鎖が解け、都市が動き出した。上海は日本の衣服産業にとって最も重要な拠点。素材から資材、製品まで情報とともにここに集まり、ここから出荷される。しかし、厳しい外出規制で全てのオペレーションがストップしてしまった。納期遅れも発生している。日本では夏物が動き出しているが、商品が揃わず機会ロスも懸念される事態に。製造で止まっているならまだしも、仕上がっているのに配送できず、倉庫にとどまっている。日本のアパレル企業にとって、もどかしい夏が到来した。
側溝に落としたスマホは、自宅から火ばしを持ち出し側溝のふたの穴に差し込み格闘すること30分、雨が本降りになる前に救い出すことができた。しかし、上海の港に留め置かれているアパレル製品は夏物本番に間に合うのだろうか。物流は動き出したが、もどかしさは消えない。
(原)