《視点》サイズ別ハンガー

2019/05/23 06:23 更新


 あるメディアのインタビュー記事をみた縫製業の経営者は「笑っちゃう」と冷ややかな目で話した。インタビューでは有名ブランドのデザイナーが「生産者に感謝したい」と語っていた。しかし、その経営者によるとそのブランド、「難癖をつけて加工賃を支払おうとしない」というのだ。

 聞くと数年前のこと。そのブランドのアウターを作って納品した。すると「ハンガーをサイズ別に分けていないから型が崩れた」とクレームが入り、加工賃を踏み倒されそうになった。サイズ別にハンガーを分けての納品など思いもしなかった。

 泣き寝入りしたくなかった。その経営者はそのブランドに対して裁判を起こした。「納品にかかる1、2日では型崩れしない」「事前に指示があった訳でも、ハンガーを支給された訳でもない」などと訴え、工場側が勝訴した。くだんの工場はもうそのブランドの仕事は止めたが、「いまだに支払いが悪いと知り合いの工場から聞く」と言う。

 生産者への感謝の気持ちとはなんだろう。それが工賃を踏み倒すことでは絶対にあってはならない。

(森)



この記事に関連する記事