起業したばかりの経営者から話を聞いた。デジタル系の高い技術を持つ企業で、早くも引き合いが殺到しているという。ただ、困惑するのは「出資したい」「会社を買い取りたい」という要望が非常に多いことだと言う。
資金が潤沢なら、技術開発や優秀な人員への投資もできる。だから「のどから手が出るほど欲しい」。しかし、起業の目的は技術力を生かしたビジネスを確立すること。そのためには、自前でビジネスを軌道に乗せることが最優先と考える。
同じようなスタートアップ企業では、外部から資金を入れ、人員を増やしたが、何年経っても利益が出ない、あるいは業績さえ公表できないケースも目立つ。「いずれは売却して利益を得たい」と考える起業家が多いのも事実だ。
事業会社は手っ取り早く技術を取り込むために傘下に置こうと考える。ただ、技術自体の評価や将来性、そして起業家の構想などをどこまで精査しているのか。目新しさで飛びつけば、結局は不良資産を背負い込むことにもなりかねない、危うさを感じた。
(矢)