大ヒット商品を生んだメーカーの経営者にその要因をたずねるうちに、企画のいきさつから、経営姿勢に話が移った。彼は言う。「メーカーの使命は、急なバイイングに応えられる準備をすること」。聞けば、ほとんどの商品は受注の何倍もの量を生産して、不測の事態に備えているそうだ。
在庫過多を原因に倒産に追い込まれることは決して少なくない。そのためか、生産量を抑えることが普通に見えることもある。しかし、予想を超える需要があったときには欠品が生じ、販売機会を失う。物が売れ始めてから追加生産するのでは、間に合わないことも多い。強気の生産計画は売れる自信がないとできない。生産量の計画は、商品に対する自信の強さと比例する。
先に述べた経営者の企業の取引条件は、全て買い取りで受注量にかかわらず同一としている。メーカー同様、小売りにもその使命があるはずだとする。委託や取引条件の緩和を求める人は商売人ではない、と手厳しい。リスクを他に押し付けるより、まず自信を持って己の使命を果たすこと。その先に消費者の支持があるのではないだろうか。(樹)