《視点》失って得るもの

2017/06/01 04:00 更新


 「失うことで得られるものがある」ということを、この間の取材で痛感した。一つは靴メーカー、アサヒシューズの再生劇。98年に経営破たんし、会社更生法の適用を受けて再建を進めていたが、改革の途中で利益率の高い自社製品にシフトすべく、不採算の取引はたとえ大口でも撤退していった。減収を伴うものだったが、利益体質に転換。昨年末には更生債務を弁済した。

 もう一つは、ゴールドウインの消臭肌着「MXP」のリブランディング。宇宙飛行士用ウェアに使う機能素材を使って話題を呼ぶも、その後、価格競争に巻き込まれてしまった。「これ以上価格を落とすには機能を落とすしかないが、それは目指すものと違う」と路線を変更。高い性能をきちんと伝えるイメージ戦略に力を入れ、価格も引き上げた。当然、いったんは販売数量は落ち込んだが、高感度な客をつかみ、今では前年比20~30%の増収を続けている。

 もちろん売り上げは大事だし、それを軽視するわけではない。しかし、どちらもリスクを負いながら得たのは、利益とブランドと誇りだと思う。(潤)



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