【パリ=松井孝予通信員】坪由織物(福井県)がパリ中心地で3日間、24年春夏に向けた個展を開いた。環境負荷を軽減したシルク織物を開発し、欧州の中高級ブランドに向け販路を開拓するプロジェクトで、中小企業庁のジャパンブランド育成支援等事業費補助金に採択された。信金中央金庫が本補助金支援パートナーとなり、福井信用金庫との連携したサポートで実現した。
坪由織物は、国際素材見本市プルミエール・ヴィジョン(PV)パリに継続出展していたが、12月プレビュー展までの開発時間の不足に悩んでいたという。個展の開催でこの課題を解消し、PVパリ2月展よりも一足早く新作を発表することで、商談は20社を超えた。
個展ではシーズンの鮮やかなトーンの新色を並べ、はっとする印象的な世界を作った。染色と素材の両面で環境負荷に配慮した技術で、美しい発色を実現したという。国産糸を強みにシルクにトリアセテート、アセテート、リサイクルのラメをミックスした生地を打ち出した。ラグジュアリーメゾン向けには、シルク・トリアセテート・ウールで織った薄く軽やかでありながら、しっかりした表情も持たせた黒のダブルフェイスを提案。光沢のある面はレディス、ウールの風合いはメンズに使える。
環境負荷に関しては「フランスが最も厳しい」(坪由昭一社長)が、同社の製品開発や価格への反映に対する理解が得られやすい市場だ。輸出の物流費高の課題は残るが、より進歩した日本製エコシルクのビジネスチャンスは大きい。