東レは透湿防水素材「エントラント」で、運動時の衣服内の蒸れを軽減する高通気タイプを開発した。防水性と通気性を併せ持つ透湿防水素材は世界的にもまれで、アウトドアやスキーといった、本格的なスポーツシーンからライフスタイルウェアまで幅広い用途を狙う。販売計画は17年度5万メートル(約1億円)、20年度50万メートル(約10億円)。
エントラントは微多孔構造の疎水性ポリウレタン樹脂を生地にコーティング、ラミネートした透湿防水素材。微細な孔によって0.4ナノメートルの水蒸気は逃がし、1ミリサイズの雨の浸透を防ぐ。新開発の高通気タイプは製膜条件を最適化することで、従来比3~5倍の大きさの穴を配置、これまでの50倍の通気性を持たせることに成功した。
製幕の最適化で従来比3~5倍の孔を設けた(左)。右は従来の多孔膜
耐水圧は2000~3000ミリと「中程度の雨でも使える」レベル。ストレッチ性も持つため、防水性と同時にウェアの快適性を高めることができる。いずれも膜そのものの機能に加え、生地にコーティング、ラミネートする際の接着プロセスも重要で、技術力のある北陸の加工場で生産する。特殊ラミネート技術により、様々な表面形状の生地や、コーティングでは難しかった薄手の織・編物でも展開が可能。
「これまで防水透湿素材で透湿性を高める開発を行ってきたが、欧米のスポーツアウトドア中心に運動時の衣服内をさらに快適にしたいというニーズが高まっていた。また、タウンユースでも着用時の蒸れが課題になっていた」(浅田康治スポーツ・衣料資材事業部長)という。スポーツからライフスタイルウェアまで取り込む。
18年秋冬向けから販売開始し、トレイルラン、自転車など多様化しているアウトドアやスポーツ分野で先行、さらにスポーツとファッションの間のゾーン、セレクトショップなどタウンユースへも提案する。
通気性のデモ。防水性と同時に従来の50倍の通気性を持つ