東京の若手~中堅デザイナー 資本提携が相次ぐ

2017/09/11 04:35 更新


 東京の若手~中堅デザイナーが資本提携する例が増えている。相手先は商社や小売事業者など。ブランドのビジネス拡大に伴い、安定した経営資源を求めるデザイナー側の要望と、ブランド開発力や商品開発力のノウハウを蓄積したい提携先との思惑が一致した。

(小笠原拓郎編集委員)

クリエイションに集中

 この間、資本提携したデザイナーブランドには、「アタッチメント」「ファクトタム」「ファセッタズム」などがある。創業10年あまりで、売上高は5億~10億円という規模が共通する。

「ファセッタズム」の18年春夏コレクションから

 ファセッタズムは、ネクスグループの連結子会社でコンサルティングサービスや人材紹介などを手掛けるバーサタイルと資本業務提携し、ネクスグループの連結子会社となった。

 ネクスグループは、通信機器デバイス製品の製造やシステム開発などの子会社を複数持ち、ファッションを含む各種産業分野へIoT(モノのインターネット)などの導入を進めている。エスニック衣料・雑貨販売のチチカカやカジュアル専門店シーズメンとも資本業務提携している。

 アタッチメントは繊維専門商社のヤギに全株式を譲渡、傘下に入った。

 ヤギは20年3月期を最終年度とする中期経営計画の重点方針に「総合力発揮の強化」を掲げ、事業領域を拡充している。「タトラス」などを販売するリープスアンドバウンズ(現タトラスジャパン)を子会社化、撚糸が主力の山弥織物を子会社化するなど積極的だ。

 セレクトショップ「ステュディオス」を運営するトウキョウベースも、ファクトタムを運営するロスチャイルドと資本提携した。

 こうした資本提携の背景には、デザイナーブランドが事業を拡大する際、安定した経営資源を求めることがある。創業10年あまりになり、出店を加速、卸し先を広げるなか、経営や財務をプロフェッショナルに任せ、クリエイションへと集中する段階なのかもしれない。

 パリでの発表を経て、販路を拡大するファセッタズムは、世界で100店を超える卸し先が広がった。その生産から納品までの資金運営など、これまでにないにノウハウが必要になったため提携へ踏み出した。

 ファクトタムも創業10年を経て、直販で事業を拡大する狙いで提携を進めた。これまで卸が8割以上だったが、この卸の規模を維持しつつ、将来的には直販を5割超にする計画だ。

 提携したトウキョウベースは出店支援、販売支援、EC運営、海外コレクションへの出品などをサポートする。中でも出店に大きな可能性を感じており、店舗はファクトタム直営でトウキョウベースが運営支援していく。

提携先もシナジー

 提携先にももちろんメリットはある。

 例えば、ヤギはアタッチメントのブランド力とテキスタイル開発力、アパレル販路の活用による繊維二次製品部門の基盤強化やブランドビジネス推進の足がかりとして期待している。一方、アタッチメントも、ヤギの国内外の生産背景、経営資源、生産、販売ルートを共有してシナジー創出を目指す。

 デザイナーにとって、クリエイションとビジネスをバランスよく成長させていくのは大変なこと。インディペンデントな東京のデザイナーのビジネスは卸ベースで始まり、売上高5億円を機に直営店運営や多店舗化を進めるケースが多い。

 その際、経営や店舗の運営を専門にするチームに任せ、デザイナーはクリエイションに集中することは選択肢の一つ。世界でみても、クリエイションと経営の両方をハンドリングする才能といえば、川久保玲や一時期の「バーバリー」のクリストファー・ベイリーなど限られた名前しか思いつかない。

 売り方までをデザインするというクリエイティブディレクター的な考え方は、今のデザイナービジネスに必須ではある。だが、それを考える上でも、財務や経営をプロに任せるという形態もありなのかもしれない。

(写真=catwalking.com)




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