東京ブランドのレディスの17年春夏で、透ける素材の重ねや肌見せのディテールなどで表現する、軽やかな感覚が広がっている。それを、欧米ブランドのようにエレガントに表現するのではなく、強いイメージに落とし込むのが東京流だ。
「カラー」(阿部潤一)は、透ける素材の重ねや花のモチーフで、いつもよりぐっとフェミニンなムードになった。といっても、単に可愛い、きれいというのではなく、どこか挑戦的な感覚が漂うのがブランドらしい。花柄刺繍のオーガンディを重ねたドレスやブラウスに、小花柄プリントのシフォンにメタリックなドットプリントを載せたブラウス。そこに、タイパンツ風のラップパンツや、チャイナカラーのディテールなどを取り入れて、オリエンタルな気分をまぜていく。スポーツウェアを思わせる鮮やかな色の対比や、メンズスーツに使うウール地のミックスも、強さや違和感につながる。
「ファセッタズム」(落合宏理)は、ブランドらしいスーパーレイヤードに磨きがかかっている。市松模様やカムフラージュ、パンチのある真っ赤な花柄を、軽やかなシフォンやぱりぱりとしたペーパータッチの素材に載せて、量感たっぷりのノースリーブコートやドレスに仕立てる。ドレスにブラトップ、パンツ、アウターと、複雑な重ね着がユニークでタフな印象だが、細いリボンで結び留めるカシュクールディテールの背中からは、素肌が大胆にのぞいてドキッとする。生地から生え出すようなラッフルやフリルもポイントで、フレアパンツの裾やジャケットのフロントにたっぷりと載せた。
山縣良和は、これまで主にコレクションピースを制作してきた「リトゥンアフターワーズ」のラインを拡充。ポエティックで強いデザインを保ちつつ、量産に落とし込む商品を増やした。イメージしたのは「激動の時代を生きる女性」。といっても、とげとげしい強さはなく、軽やかで柔らかいムードが漂う。ギャザーをよせたグラスオーガンディを何重にも重ねて膨らみを出したブラウスやジャケットに、花のモチーフを透け感のあるカットジャカードで表現したセットアップやロングジレ。オーガンディのアイテムは、どれも内側に小さなサシェが付いていて、ハッピーでファンタジックな感覚が広がる。
「アキラ・ナカ」(ナカアキラ)は、スイスメーカーのレース地などを使用し、従来からの顧客とともに、更に上質なものを求める消費者を意識したコレクションだ。「〝日本のラグジュアリー〟とは何かを考えた。コンテンポラリーゾーンでは満足できない、まだ開拓されていない市場がある」とナカ。グラフィカルなレース地に、オストリッチの羽根刺?のように見える繊細なカットジャカードを、ベアショルダーのブラウスや量感たっぷりのスカートに仕立てる。動きに合わせて布が揺れる感覚や、透ける肌も軽やかでエレガント。ブランドアイコンのクロシェニットでは、トップだけでなくドレスも作った。
「タロウ・ホリウチ」(堀内太郎)は、ピカソ夫人のジャクリーヌ・ピカソからイメージを広げた。麻や麻タッチの素材、たっぷりとしたギャザーディテールなどをポイントにしたリラックスエレガンスに、ブランドらしいフューチャーリスティックな感覚を加える。麻混の生地をパネル状に重ねたブラウスやスカートに、マルチストライプの織り柄がリゾート感いっぱいのドレスやプリーツスカート。そこに、オーガンディやメタリック素材を差し込んで、少しだけ違和感を作り出す。ナチュラルで温かいムードをベースにしつつ、モダンな感覚に仕上げた。