「瞑想してる？」ボンジュールみたいに、パリのファッション業界で「瞑想してる？」の挨拶が交わされるようになってきたような。
この場合の「瞑想」は、マインドフルネス瞑想。ロサンゼルスで精神科医をしている久賀谷亮氏の言葉を拝借すれば、「瞑想などを通じた脳の休息法の総称」。姿勢を正し、呼吸しながら「今ここ」に意識を集中させる。
スティーブ・ジョブスが瞑想を実践していたことはよく知られているし、Google、Facebookなどの企業もマインドフルネス研修が導入されているとのこと。脳科学の分野では、第3世代認知行動治療法のひとつとしてマインドフルネス瞑想の効果が実証されています。
脳疲労、ストレス、イライラという生活にどっぷり浸かってないで、この辺で「瞑想」でも試してみましょうか？ギャラリー・ラファイエット（GL）のパリ・オスマン本店ギャルリー・デ・ギャルリー／Galerie des Galeries で。
百貨店で瞑想？＿ と不思議に思うのも無理はないのですが、これをプロデュースしたのがステラ・マッカートニー。瞑想どころじゃないですよね。
それではこの辺でGLとステラと瞑想の経緯を。ギャラリー・ラファイエットが世界の百貨店で初めて立ち上げた「肝いり」サステイナブルムーヴメント（運動）「GO FOR GOOD」（GFG)が、いよいよ8月末からパリ本店を中心に仏全店、そして専門サイトでスタートしました。
このムーヴメントのアンバサダーが、（もちろん）ステラ・マッカートニー。GLのファッションディレクター、アリックス・モラビトさんは、「ステラを選ぶのは当然のこと」と自信たっぷりに語ってます。確かに。おっしゃる通りです。
オスマン本店本館モードフロアにはステラとGFGとのカプセルコレクションのポップアップ、そしてアートスペースGalerie des Galeries ではステラの個展、と言っても彼女のコレクションもアーカイヴも、つまり洋服が1枚もない、彼女がプロデュースした瞑想空間"SANCTUARY OF STILLNESS"が開催されています。GO FOR GOODは自分のためによいことをしましょう！というムーヴメントでもあるのです。
「どうしたら瞑想によってあなたがさらにクリエイティヴになる？」
これがステラの個展のコンセプト。ここでいう瞑想は、マインドフルネスではなくTM（筆者のイニシアルか？いや違う）、TRAMSCENDENTAL MEDITATION、「超越瞑想」なのです。ヒンドゥ教由来の瞑想法で、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーが伝道師となり世界に広まったそう。
ミック・ジャガー、ビートルズも1960年代に始めたそうな。TMのメソットは、朝晩15〜20分、純粋意識に達するため心の中でマントラ（真言）を唱える。これにより自分自身の感覚を目覚めさせ、そして蘇らせ発達させ、潜在能力を引き出す。
「TM」と言えばこの人（筆者ではない、執拗にも）。DL、ダウンロードではなくデヴィッド・リンチ。TM歴40年、2005年に「デヴィッド・リンチ財団」を設立しTMを学校教育に導入させるため活動しています。
デヴィッド・リンチの創作を見れば、このTM効果のほどが分かるというもの、TMの実践者がみんなリンチみたいになってしまった世の中を想像すると、リンチの映画より不気味なような、怖いような。
ステラ展の会場では、リンチのお部屋があり、そこではフランス初公開、リンチの息子オースティン・リンチとケース・シモンズが創設したクリエイティヴスタジオTête-a-Tête が制作した瞑想を巡る9分間の短編フィルム "Curtains Up"が上映されています。
お部屋の前にはリンチ筆、TMの設計図みたいな瞑想解説図がセルフサービスで置かれているのですが、これを見てからの方がフィルムに入り込みやすいかも。一度願いが叶うなら、デヴィッド・リンチの頭を真っ二つに割って中身を見てみたい＿と思っていましたが、この願望の1％くらいは満たされたかも。瞑想のウオーミングアップみたいなイメージを見たら、苔と石が敷かれたスペースに移動して、実際にTM入門してみましょう。
デヴィッド・リンチ財団理事ボブ・ロスの最新書籍 ‘’ Strenght in Stillness ‘’をオーディオブックで試聴できます。（受付で身分証明書と引き換えにデバイスを借りることができます。）
1冊聞き終えるのに4時間かかるせいか、貸出率はイマイチてな感じですが。冒頭数分間聞いてみたのですが、すぐ瞑想という訳にはいかないながらも気持ちよかったです。
それと瞑想への誘いとして、’’ 108 BEADS ‘’ 壁に108個の一部ピンクに塗った石が吊り下げられ、これを数珠 /bead のように爪繰りながら、壁に頭の中の思いを描く、落書きします。
ステラの超越瞑想展は10月10日まで（月曜を除く毎日。入場無料）。ここ、スピリチュアルなお休み処になるのでしょうかね？
そんな暇ないよ、という声が聞こえてくるのですが、別にこの場所でなくてもいいから、いいクリエイションのためにも、イヤイヤその前にまずは自分自身のために脳を休息させてあげましょう！
インフォメーション
STELLA McCARTNEY’S
SANCTUARY OF STILLNESS
GALERIE DES GALERIES
松井孝予
（今はなき）リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア（もちろん犬）の家族ライカ家と同居。
