《鈴木弘治さんを悼む》収益力の向上、経営の安定化に功績

2024/04/25 16:50 更新


2013年4月

 高島屋会長を2月末に退任し、2カ月足らずの逝去だった。78歳と高齢だったが、21年間に及ぶ高島屋グループでのトップの退任に続いて、突然の訃報に社内外で驚きが広がった。

 高島屋に1968年に入社し、主に経営企画畑を歩み、労働組合の執行委員長を長く務めた。49歳で取締役に就き、百貨店の構造改革に取り組んだ。03年の社長就任以降、借入金を圧縮し、増資や社債などの資金調達により財務体質を強化してきた。日本橋、新宿など賃貸物件を取得し、今の収益力の向上、経営の安定化に結び付けた功績は大きい。

 まちづくり戦略をグループの基本政策に掲げ、東神開発をけん引役に国内外で商業不動産を開発した。JR東海と資本業務提携を主導し、慎重論が多かった社内を説得し、立地や成長性を見抜いてJR東海高島屋の創設した。同店は国内有数の売り上げ規模を誇るまでになっており、その先見性は明らかだ。

 剛腕タイプだが、判断力と説得力があり、人心掌握に秀でていた。人事については女性や若手をもっと登用すべきだと説いてきた。記者が駆け出しのころ、インタビューでは、あいまいさを排除し、明確な判断を示してもらった。業界の重鎮としての存在だった。

 ご冥福をお祈りします。

(松浦治)

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