パリのメンズファッションウィークで活躍している「ターク」の強みの一つは、テーラードジャケットやMA-1などに施されたコード刺繍だ。ブランドを運営するターク代表兼デザイナーの森川拓野さんは、国内2社の縫製工場との協業によって、手仕事のような表情の豊かさを量産の手法で実現している。
技術的には、自動ミシンのアタッチメントにテープやコードを通してミシン掛けする、昔から存在する手法だ。「僕はプレタポルテのデザイナーだし、いかに効率的に量産できるかを優先して考える」と森川さん。コード刺繍は、刺繍の部門を持つ縫製工場とのコミュニケーションによって発展させた。一筆書きした図案を元に強弱の要望も伝える。そのニュアンスを縫製工場の担当者にくみ取ってもらい、柄としてプログラム化する二人三脚の技だ。
前職で婦人服に携わった経験から「一つの手法を使って、最大限に可能性を引き出せるか」も大事な要素。シーズンのコンセプト、アイテムに応じ、異なる感性で表現している。