《寄稿》サステイナブルシフトへの要諦 基準や認証の在り方を修練する

2024/07/03 11:00 更新


ヘルシンキでは連日イスラエルのガザ侵攻に関するデモにより、5,000Km離れた異国への訴えが地響きのように街を覆いつくしていた

 6月にフィンランドの首都ヘルシンキ大学で開かれた「サステイナビリティーリサーチ&イノベーションコングレス2024」で登壇する機会があった。100カ国・地域以上のサステイナビリティーリーダーが一堂に会するこの会議は今年で4回目を迎え、アカデミックな視点に限定せずイノベーションの促進を目的としている。昨年12月に慶応義塾大学の蟹江憲史教授と共同で応募し3月に通過の連絡を受けての参加であった。

(伊藤忠ファッションシステムifs未来研究所所長代行シニアフェロー、一般社団法人リ・クリエイション理事 山下徹也氏)

グローバル共通の課題

 私たちの発表内容は、コレクティブインパクトの実現には、事業立ち上げフェーズから、官民学に加え生活者の連携の重要性や、テクノロジーの進化と共に基準や認証の在り方も修練する必要性を要旨とした。そしてその具現化策として社会実装プランを発表し、反響を得ることとなった。

 この頃、欧州連合(EU)では長引くインフレと各地で起こる紛争や移民の問題から、政策への批判が報道されていた時期。厳格さばかりが増す環境政策が光熱費や生活必需品の価格を高騰させ、市民は目に見えない成果に嫌気が差している、そんな地合いでもあった。

 私たちのセッションでも、サステイナブル製品の表示のわかりにくさ、情報の信頼性、店頭でもネットでも探すことができない利便性の問題など、個社では解決が困難な構造的な課題が市民の声として上がった。

 サステイナビリティーの分野ではEUが先行しイニシアチブを握っている論調を国内でもよく耳にする。戦略や枠組みの発表は確かに早いのだが、規制や実装などは別と捉えるべきで、「EUに倣え」という考えでいると肩透しに出くわすことが少なくない。

 講演の2日前に19年のG7サミット(主要7カ国首脳会議)時に設立された国際イニシアチブ「ザ・ファッション・パクト」とパリでミーティングを実施した。不可逆的な状況になりつつあるクライメットチェンジなどには、消費行動の変容が不可欠という共通の課題を克服するために、中長期的に関係性を構築していくこととなった。

社会的意義ある消費を

 先述した新事業について少し説明をさせて頂く。事業名はリ・クリエイション。5月に推進母体として一般社団法人を設立。本事業の目的は、サステイナブル市場形成のカギとなる企業の取り組みと消費をつなげることにある。そのためにまず私たちが大切にしたいのは、真の意味で製品の背景を生活者に伝えること。一義的な啓発ではなく、基準や認証を通じ社会的意義をもつ消費形態を実現していきたいと考えている。

 初年度の24年は、国際認証機関、金融機関、大学、メディア、EC、百貨店、生活者、国際イニシアチブ、行政などあらゆるステークホルダーと協力し事業基盤を構築する。そして本事業は環境省事業である「環境配慮行動普及促進事業及び二酸化炭素排出抑制対策事業」として採択され7月1日に報道発表となった。皆様と共にこの難局を乗り越えていくつもりだ。

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