ファッションストアに復活する「失われたニューヨーク」(杉本佳子)

2014/07/08 00:00 更新


 マンハッタンを長年見てきた人なら、昨今のマンハッタンの路面店の変貌ぶりに嘆きやつまらなさを感じる人は多いのではないだろうか。

 路面店スペースの多くが、次々と銀行や大手ドラッグストアチェーンにとって代わっている。昔ながらのレコード屋さんが激減して久しいが、老舗の本屋さんもどんどん姿を消している。最近では映画「恋に落ちて」の舞台となった美しい本屋のリッツォーリがなくなり、ニューヨーカーたちをがっかりさせた。

 もっとも、彼らの多くは、普段はアマゾンで本を買ったり電子書籍で読んだりしているはず。それでいて、老舗の有名書店がなくなると、「もったいな~い!」と騒ぐのは虫のいい話だが、まあそれが世の常人の常。原因は、10年とか15年単位のリースが切れると家賃が突然高騰し、家賃が払えなくなることにある。長年人気を保ってきたレストランやバーも、次々閉店を余儀なくされている。

 そうした中、「失われたニューヨーク」が一部のファッションストアに復活している。服だけで新しさを出すことは難しいし、ネットで何でも買える時代だからこそ、「あそこに行かないとできない」体験や「あそこに行かないと買えない」モノを提供する必要がある。そこに、さらにノスタルジーを加えることが、ニューヨーカーたちの気をひくポイントになっているといえるだろう。
 
 5番街と21丁目にあるクラブモナコは昨秋改装し、美しい本売り場や生花のコーナー、コーヒーショップを導入した。本売り場は老舗の本屋「ストランド」、コーヒーショップはブルックリンのカフェ「トビーズエステート」と提携したものだ。



クラブモナコの本売り場。アイボリーを基調としたクリーンなスペースの上、椅子もあるのが嬉しい


本のそばには、美しい生花が売られていて、気持ちがなごむ


コーヒーショップは、表に行列ができているときもある


ロレックスで、今までと違う客層にもアピール


 アーバンアウトフィッターズが4月にブルックリンにオープンした新業態の「スペースナインティエイト」は、メンズ売り場と同じフロアにレコード売り場がある。

 ファッションの売り場にもビンテージやリメイクのコーナーがあるが、レコード売り場ではレコードプレイヤーやポラロイドカメラなど、懐かしいアイテムを揃えた。


89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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