クオリティの高いファストフードが集結(杉本佳子)

2014/06/11 00:00 更新


 あの9.11同時多発テロまでワールドファイナンシャルセンターと呼ばれていた建物が、「ブルックフィールドプレイス」と名を変えて再建中だ。

 2億5000万ドルかけた改装工事で、ドーム型天窓が特徴的だったウインターガーデンも蘇りつつある。そして6月初め、その2階にフードコート「ハドソン・イーツ」がオープンした。



あれから13年を経て、再興されつつあるウインターガーデン


 来春にはエルメス、サルバトーレフェラガモ、マイケルコース、カリプソ、ポールスミス、Jクルーなど、40に及ぶ店もオープンする予定。9.11前の様子を知っている者にとっては、この再生はとても嬉しく、かつ感慨深い。
 
 このハドソン・イーツ、早速周辺で働くビジネスマンやOL、ツーリストの人気を集め、ランチタイムはどの店にも行列ができている。出店のラインナップやメニューは、今のニューヨーカーの気分やライフスタイルを如実に反映している。
金融街に近いことから、ここにランチを食べに来る人たちの年収が比較的高いことは想像に難くない。経済的に比較的余裕があり、クオリティーにこだわるニューヨーカーを満足させるファストフードを揃えた空間、といえそうだ。

 例えば、「農場からカウンターへ」をキャッチフレーズにしている「DIG INN」。ホルモンや抗生物質を使わず、地元のサステイナブルな農場でつくられたものを使用し、その流通過程の透明性が100%であることをアピールしている。



ハドソン川を眺めながら食事ができる広い空間も魅力的だ


 ほとんどの店がセルフサービスだが、食事ができるカウンターを設けている「TARTINERY」のメニューには、「どのパンがいいですか?」という表記がある。

 ニューヨークの著名なフレンチレストランのBALTHAZARのカントリーブレッド、ニューヨークの著名なベーカリーチェーンのELI’S BREADのマルチグレインのパン、パリのPOILANEのサワードゥブレッドのいずれかを選べるようになっている。

 私も「バゲットと全粒粉のパンならあそこ、ベーグルならあそこが一番美味しい」というこだわりがあるが、この店もそうした信念を大事にしていることが伺える。



TARTINERYはキヌアのサラダやサンドイッチに加え、フォアグラなど普通のフードコートではまず見ない高級メニューもある


 最近はできるだけ炭水化物を取らないようにする人が多いが、「SKINNY PIZZA」はその名の通り、薄いピザ生地をウリにしている。

 スローフードへの関心も高まっているが、「MIGHTY QUINN’S BARBEQUE」は、テキサスとキャロライナの伝統的なバーベキューの手法をミックスして時間をかけてバーべキューしていることをセールスポイントにしている。



SKINNY PIZZAはグルテンフリーのピザ生地もあるし、チーズやトッピングも好みで選べる


どこも同じくらいの行列ができていて目移りしてしまうが、私がこの日選んだのは、ロサンゼルスからやってきた「UMAMI BURGER」だ。



UMAMI BURGER。多くのショップの前にメニューを持ったスタッフが立ち、積極的に勧誘している


 メニューには、「肉やバンが少ない方がいいですか?肉の代わりにポルトベロ(大きなキノコの1種)、バンの代わりにレタスもできます」と書かれ、ベジタリアンやグルテンフリーを好む人にも対応している。さらにメニューには、ミディアムレアがお勧めと書かれている。

 私は何を隠そう、ニューヨークのレストランでハンバーガーを食べて食あたりをして数日寝込んだ経験が2回ある。
なので、外食ではハンバーガーを基本的に食べないようにしているのだが、UMAMI BURGERの行列につい並ぶ気になってしまったのは、ここが12年にGQ誌から「バーガー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたからだ。

 「挽肉でミディアムレアって大丈夫?」とかなり心配だったが、レジの人が「うちではミディアムレアを勧めています。とっても安全です」と強調するので、トリュフが入っているというバーガーを頼んでみた。

 トリュフが入っているから特に高いというわけではなく、この店の平均的な価格だ。

 5~6分待っただろうか。出てきたバーガー、確かにソースもお肉もなかなか美味しかった。



トリュフ入りバーガー 12ドル


でも、この小さいハンバーガーだけで税込みで13ドル以上。トリュフが入っているから納得すべきなのか、付け合わせが何もないこととこの小ささを考えると高いと考えるべきか、思案する間もなくあっという間に食べ終えてしまった。



まだ工事は続いているが、ウインターガーデンやハドソン川沿いの屋外広場で音楽やアート関係のさまざまな無料イベントが開催され始める予定。同時多発テロ以前の状況が少しずつ復活している



89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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