【店長に聞く】実店舗でのEC、SNS活用法とは?㊦

2018/10/09 06:26 更新


 ECやSNSは、今やブランドにとって欠かせないツールだ。

 では店頭のスタッフたちは、実際にそれをどう活用して実店舗の売り上げアップに結び付けているのか。ECやSNSによる影響、スタッフスタイリング画像のコツ、実店舗ならではの接客術を店長に取材した。

【関連記事】【店長に聞く】実店舗でのEC、SNS活用法とは?㊤

チームでの取り組みが集客力に

「ビームス」二子玉川店店長 小川和彦さん

 小川さんは3月に着任した際、集客のために「SNSでもリピーター、ファンを作ること」を意識したと話す。

 メンズのドレスやレディスのカジュアルなど、複数のレーベルが集まる二子玉川店は、以前からSNSの発信に強い店舗だったという。しかし、近隣に大型商業施設が出来てから集客面で苦戦していたこともあり、より多くの人に見てもらえるようにSNSの環境を整えようと考えた。レーベルごとに顧客層がチェックしそうな時間帯を狙って更新時間を設定し、写真の背景を揃えることで、一目見るだけで「二子玉川だ!」と分かるようにした。商品を紹介する時には、読み飽きないように起承転結を作ることもスタッフに伝えた。

「スタッフ全員の協力体制でSNSの強化が出来た」と考える小川さん(右)

 投稿にこだわるようになってからは、お気に入り登録やPV(ページビュー)数が増えた。SNSを強化したことで、ファン作りだけでなく「スタッフにコーディネート力や接客力がついた」という。入店客数は3月から前年同月を超え、売り上げも6月から好調に推移している。

 最近はネットで下調べして、店舗でさくっと購入する人が多くなっているという。そういう状況に対し、これから販売する商品など「少し先の情報をお客様にSNSやDMで提供し、店でもVMDで見せる」ようにしている。情報を先見せして来店のきっかけを作り、店舗でおもてなしするスタイルだ。 

 個人の取り組みではなく、店でチームとして取り組んでいる意識作りも欠かさない。SNSの強化は、スタッフ同士のコミュニケーションのきっかけにもなったという。SNSの順位が「1位になることが本質ではない」が、苦戦していた時期があったからこそ店全体で頑張って上位になることは「全員にとってうれしいこと」だと話す。

プラスの情報で購買へつなげる

「ジェイダ」ルミネエスト新宿店店長 上野文郁さん

 「SNSを見て来ました、という声を聞かない日はないです」と上野さんは話す。

 マークスタイラーのレディスブランド「ジェイダ」は、ブランド全体で認知度を上げるために、昨年からインスタグラムやLINE、ツイッターなどSNSを強化している。ジェイダには「ジェイディーズ」と呼ばれるブロガーがいる。今年から人数を増やし、反応が良い記事を研究し、写真の撮り方によりこだわるようにした。そのかいあってか、「SNSで商品をチェックしてから店に来るお客様が多くなり、ふらっと来た人でもSNSで見たことがあるという方が多い」と話す。ジェイダで買い物をしたい、ブロガーに会いたい、と遠方からわざわざ来てくれる人もいるという。

その場で早く手に入れられることも購買のポイントと話す上野さん

 SNSのスタイリングをカジュアル、スポーティー、可愛いなど、バリエーション豊富に見せるように工夫している。その結果、認知度が高まり客層が広がった。昔は特定の客層中心だったが、今はテイストに関係なく純粋に「ジェイダのパンツは脚がきれいに見えるから買う」という人も増えてきた。

 特にデニムパンツが人気だ。ECサイトで見て、実際にはいて確かめたいと来店する人も多い。POP(店頭広告)に、SNSで使った着用写真を使うことで購買意欲につなげている。店頭の接客では、はくとどうして脚が細くきれいに見えるのか、写真で見ただけでは分からないステッチの入り方やポケットの位置を具体的に伝えることを心掛けている。試着の時に合わせるように、脚がよりきれいに見える靴も用意している。悩んでいる人には、比較出来るように別のパンツや合わせやすいトップの試着も勧め、買い上げ率やセット率のアップを図る。

《バックルーム》

 EC全盛の今、実店舗がただの〝試着場〟になってしまわないようどんな工夫をしているのか、スタッフのモチベーションをどう維持しているのかといった質問も想定しながら取材に臨んだが、前向きな意見が多く良い意味で裏切られた。 試着して迷って結局ECでクーポンを使って買う、というケースもゼロではない。しかしそれよりも、ECやSNSの活用でより新規客にリーチできる、客数が増えるといった実店舗へのメリットを評価する店長が目立った。SNS上で直接、入荷日や着こなしのコツをスタッフに問い合わせる客も増えている。ダイレクトなコミュニケーションはむしろ高まっていると感じた。

(繊研新聞本紙8月27日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事