【店長に聞く】実店舗でのEC、SNS活用法とは?㊤

2018/10/08 06:45 更新


 ECやSNSは、今やブランドにとって欠かせないツールだ。

 では店頭のスタッフたちは、実際にそれをどう活用して実店舗の売り上げアップに結び付けているのか。ECやSNSによる影響、スタッフスタイリング画像のコツ、実店舗ならではの接客術を店長に取材した。

リアルで可愛い着用画像に反響

「サロンバイチコ」ルミネ横浜店店長 樋之口美奈さん

 福岡での学生アルバイト時代からインスタグラムでの発信に力を入れ、「フーズフーチコ」の公式インフルエンサーにも選ばれた樋之口さん。入社後も福岡の店舗で働き、本社の商品企画やPRの仕事にも関わるようになった。関連業態「サロンバイチコ」の今春の新店に合わせ、横浜店に赴任したばかりだ。

 新作画像を投稿するとすぐに店頭でも反響がある、1商品の販売点数が増えたなど、SNSの集客効果は日々実感している。事前にECで予約商品を見て、入荷のタイミングで来店する人も多い。実際の色や素材感、自分に似合うか、手持ちの服に合うかなどを確かめて買うためだ。その際、「袖をまくった方が可愛い」「アクセサリーやインナーとはこう合わせる」など実店舗ならではの提案を行う。

タブレット上で商品やスタイリングの画像も共有している

 この夏人気の水着もSNS経由の来店が大半だ。しかし、試着室で撮った写真ではイメージが伝わらない。実際に樋之口さんらスタッフとカメラマンで海に行き、「リアルなコーディネート写真」を撮影。これを複数のECやインスタグラムアカウントに掲載した途端、売り上げが伸びた。各店のタブレットでも接客時に画像を見せられる。

 ブランドの打ち出し商品でなくても、SNSで〝バズ〟って店で売れるケースもある。やはり「写真に映ったときに可愛いものが当たりやすい」という。シンプルな服でも、背景や小物、メイクの工夫で魅力的に見せる。

 横浜店のスタッフは全員インスタグラムを利用し、フォロワーの単純合計は約4万。樋之口さんは自身が好きなカジュアルテイストの画像を上げるなど、スタッフごとの個性も客層を広げている。加えて、動画でのコーディネート紹介を投稿してみるなど、SNSの次のコンテンツにも常に目を向けている。

自宅配送で旅行客も買いやすく

「エクストララージ」「エックスガール」お台場店店長 中野 覚さん

 今春から全社で購入商品を自宅に無料配送するサービスが始まった。店のタブレット端末を使って接客し、自社ECサイト経由で購入してもらうもので、店頭在庫の有無にかかわらず、商品が提案できる。店長歴約1年半の中野さんは、来店客の目的や要望、どこから来ているかを把握した上で、新サービスの利用を勧めるようにしている。

 店の立地上、外国人観光客や修学旅行生、周辺で実施されるイベントを目的に訪れる人が多い。「購入商品を持ち歩くのは不便なため、自宅配送を勧める」ようにしている。これまでは「荷物になる」と諦めていた人も、その場で購入が決断できるようになった。「男性は自宅配送を好み、女性はすぐ着られるように持ち帰る人が多い傾向がある」ようだ。

 ECでの購入を積極的に勧められるようになったのは、「社内の評価制度が変わったことが大きい」。ECで購入しても、接客した販売員の売り上げとして店に計上されるようになり、「今までよりもモチベーションが上がった」という。店頭で取り扱っていない、EC限定商品や同社の他ブランド商品も「気兼ねなく提案できるようになった」。

 今後は、タブレット端末で自店、他店、ECの在庫検索ができるようになれば「タブレット接客がよりスムーズになる」とみる。

「自宅配送はお客様の利便性を高めるための選択肢の一つ」と考えている中野さん

 「ECで事前に購入する商品を決めて来店する人が増えている」なか、「実店舗でしか体験できない価値の訴求」も怠らない。手書きのダイレクトメールを持参・来店した客がポイントを得られるサービスのほか、店長会でデザイナーから聞き取った、ECには掲載されないほどの細かい情報を接客時に伝えられるよう心掛けている。

(㊦に続く/繊研新聞本紙8月27日付)



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