交通至便な駅ビルや多くのブランドやショップが入居するSCと違い、館の集客力に頼れない路面店は、独自の手法で集客する必要がある。店頭でどう商品を見せるのか、SNSでは何を伝えるのか、実際に来店した客とはどんなやり取りをしているのか。どうやって路面店で買い物する楽しさを味わってもらうのか。
今回は路面店の店長に客を呼ぶコツを聞いた。
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ファン作り、口コミで集客
ウィズム新宿店店長 青木華絵さん
路面店は「お客様に自発的に働きかけることが大切」と青木さん。ウィズムは国内外のデザイナーやブランドの商品を仕入れて販売する業態。別注商品はあるが、オリジナルは一切扱っていない。人気のブランドを仕入れるのではなく、バイヤーが「自分たちの目線で良いと思った商品を仕入れている」。商品の情報は店のSNSやブログで随時発信している。
ネットでチェックして来店した客にスタッフはまず店のことを知ったきっかけや商品のどこが好きかなどを聞く。仕事やプライベートな話もして、距離感を縮めていく。自然な流れで商品を購入してもらい、スタッフとの会話も楽しんで店のファンになってもらいたいと考えている。
目当てのブランドを探して来店した客もファンになると、口コミで店のことを知り合いに伝えてくれる。顧客には「友達にその服どこの?って聞かれたら、ウィズムで買ったって宣伝してます」と言う人もいるそうだ。
スタッフ全員が、親身な接客を心がけるようにしているため、今ではスタッフと話をするのが目的で来店する客もいる。
店のサイトは、月1回、特集記事を発信する。バイヤーが仕入れたブランドのデザイナーと対談したり、時にはスタッフが書き初めをした様子なども上げる。スタッフの個性も知ってもらうためだ。「商品だけでなく、面白い人がいるという理由でも店に来て欲しい」
ブログは「自分たちが好きで良いと思う商品を紹介する」。格好はつけず「とにかく良いものだから見に来てよ」という気持ちを大切にしている。商品だけでなく、店でどんなことをしているか見て欲しいからSNSに必要以上の情報も載せない。「お店で商品を手に取る楽しさを味わって欲しい」という。

滞在時間生かし濃い接客
コエハウス店長 山田彩乃さん
16年に東京・自由が丘にオープンする際、レディス、メンズ、子供服、生活雑貨まで扱う大型店の運営にやりがいを感じ、ストライプインターナショナルの社内公募で着任した。
以前は、OL向けの「イェッカヴェッカ」広島アッセ店などで勤務していた山田さん。「駅ビル時代との大きな違いは入店。路面店は自分たちが動かないといけない」。最初は、駅から離れている店への集客に悩み「お客様の立場で店の前を歩いてみたり、周辺のほかの店も参考にしたり」と試行錯誤した。
現在の集客策の一例が、月1回ペースのイベントだ。30~40代の主婦層を意識した企画が多い。ママ向け雑誌と連動したトランプゲームは子供も楽しめ、入店につながった。SNSも強化しており、特に「ウェア」はスタッフが毎日のようにコーディネート画像を紹介。それを見て、自分の好みと合うこのスタッフに商品を提案してほしいと来店するケースもある。
店の前の通行客へのアプローチではマネキンを活用する。1階が飲食業態併設のため、入り口にメンズ、レディス、キッズのマネキンを置いて服の存在をアピール。日中は主婦、夕方以降はOLに合わせてコーディネートを着せ替え、家族連れが多い土日はリンクコーデにする。
オープンから2年が経ち、再来店、顧客化も進んだ。食事をする、子供や夫と自分の服をまとめて見る、ギフトでベビー雑貨を買うなどいろいろな使い方ができるため滞在時間は長い。ECや駅ビル店舗の利便性に対して、「路面店はより時間をかけてパーソナルな接客ができる。お客様と話す機会も増えた」。居心地の良い店であるよう、「我々スタッフの雰囲気が良いことやそのためのコミュニケーション」も大切にしている。

《バックルーム》
通りかかってふらっと入る。そんな風に路面店を訪れる客はめっきり減った。ファッションを売る店をぎっしり集積したSCやファッションビルが増えたせいばかりではない。ネットであらかじめ下調べして目当てのモノや店に向かう購買行動が一般化したことも大きい。取材ではSNSを使って来店を促す店が目立つ一方、来店した客を飽きさせないよう、頻繁にディスプレーを変えたり、接客中の会話で店やスタッフのファンを増やし、再来店につなげようとする工夫も多く聞かれた。何もなくても行きたくなる。そんなコミュニティーとしての役割が今どきの路面店には求められているのかもしれない。
(繊研新聞本紙10月1日付)