【ファッションビジネスが続くために これからの幸せのかたち】
現状をより良くするために、始めなくては
「ステラ・マッカートニー」がレザーやファーを使っていないことは有名だ。サステイナブル(持続可能な)の流れが本格化する前から、強い意志を持って「ベジタリアンブランド」をうたってきた。
それは、デザイナーのステラ・マッカートニー自身が「生涯を通じてのベジタリアン」であることに起因する。「倫理的・環境的双方の動機によって、常に守ってきた信念」で、彼女にとっては当たり前のことだった。そうした社会性を大切にする姿勢が、自由で軽やかな作品を生み出してきた。
もちろん、その姿勢が光るのは、デザインに魅力があるからこそ。レザーを使っていないバッグやシューズは高額だが、人気商品に育った。デザインが価値を生んだ好例だ。15~16年秋冬に始まった毛皮のような表情の「ファーフリーファー」のラインでは、ファーフリーファーのタグで、毛皮を使っていないことを主張する。それは新しい価値の提案ともいえる。
同社は16年10月、15年度のグローバル環境損益計算書(※)を初公表した。使用原料が環境に与える総合的な影響を、直近3年間で35%減少させた。この結果を大幅な削減とし、「ノーレザー・ノーファー」精神を後押しすると発表した。
彼女は「ファッションは地球に大きな影響を与える産業です。日々、自分自身とファッション産業に対して挑戦を続けています。自分たちが何をどう作るかということに対し、責任を持つことはできるだろうかと。私たちの夢は現状をより良くすることです。そのためには、どこかから始めなくてはならない。この思いがファッション業界で共有され、賛同を得ることを願っています」と話している。
※環境損益計算書:Environmental Profit and Loss Account(略称EP&L)。企業活動における環境負荷を貨幣価値に換算したもの。通常は比較できない異なるタイプの環境負荷やブランド間・事業部間の比較を促す会計方法。