児童養護施設のボランティア団体・イチゴイニシアチブ 心に響く体験サポート

2020/03/14 06:30 更新


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《ソーシャルグッド ファッションで世界を変える》児童養護施設のボランティア団体・イチゴイニシアチブ 「自分にできること」積み重ね 心に響く体験サポート

 ファッション業界で、ソーシャルグッドな活動・事業が広がっている。手掛ける人たちに共通するのは「ファッションを通して、少しでも社会や世界を良くしたい」という思い。大企業のようなスケールメリットはなくても、個人のフットワークの軽さや業界で培った技術・人脈を生かして、「自分にできること」を着実に積み重ねている。

(佐々木遥)

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 「やっぱり(気分が)上がります」。1月の成人式の数日前、真新しい「サイ」のスーツに身を包んだ新成人の奥山葵さんは、その日一番の笑顔を見せた。このスーツは、児童養護施設を中心に活動するボランティア団体「イチゴイニシアチブ」が贈ったものだ。施設出身の奥山さんが晴れの日に着るためのスーツを探していたところ、同団体の考えに共感した「サイ」の宮原秀晃さんが「僕にできることがあれば」と贈呈してくれた。宮原さんは「サイはまじめに物を作ることを大切にしている。一つでもまじめに取り組むことを見つけて、人生を歩んでもらえたら」とエールを込めた。

「サイ」のショールームで丈などチェックする宮原さん(左)と奥山さん。サイは今年20周年。どちらも〝成人式〟を迎えた

◇プロの仕事重視

 イチゴイニシアチブは、米カリフォルニア発のファッションブランド「ル・シャルム・ドゥ・フィーフィー・エ・ファーファー」のPRなどを担当するフリーランスのPR、市ヶ坪さゆりさんが10年に手探りで始めた。秋葉原通り魔事件が発生した08年、2歳の子を育てていた市ヶ坪さん。この事件に大きなショックを受け、「子供を守りたい」一心で、近所の施設の門をたたいたという。自身の出産を経て、児童虐待のニュースを目にするたびに「何かしたい」という思いも募らせていた。

柔らかな物腰とは裏腹に、情熱の塊のような市ヶ坪さん。夢は「海外で写真展を開くこと」

 現在の主な活動は、施設での七五三のお祝いと多様な職業を紹介するワークショップ。七五三では、その道のプロが着付けや髪結い、写真撮影を行う。「心に響く体験をさせてあげたい」との思いから「プロの仕事」を重視しており、活動に参加するスタイリストの竹淵智子さんも「クオリティーがすごく高い」と舌を巻く。代表の市ヶ坪さんを中心に、美容師や着付け師、臨床心理士など8人のコアメンバーがおり、プロのカメラマンやスタイリストなど専門家集団で活動を支える。

 「子供に暴力をふるう大人が許せない」。この思いが一番の原動力だが、PRをしてきた経験から「伝え方」には一家言ある。児童虐待も「こんなにひどいことがある」と声を上げるのではなく、お祝いという明るいトピックを作りながら「その裏には何があるのかを想像してもらえたら」。

 悲しいムードを前面に出したくないため、新たな試みとして成人式に向けたスーツの支援者を探す際も、「新成人にはちゃんとしたスーツを着てほしい」との願いがあった。「ファッションってすごくパワフル。着ることで気持ちが上がって、行動に移しやすくなる」 

◇一人ひとりの力

 イチゴイニシアチブは、あくまで任意団体だ。七五三のお祝いが関西にも広がるなど、活動のステージが上がってきたが、組織を大きくするつもりはない。「一人ひとりは会社と同じくらいの力がある」との確信がある。「小さいまま前進していきたい」

(繊研新聞本紙20年2月6日付)


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