動作解析のAI(人工知能)を開発するスタートアップのサイボウン(東京)が、一人ひとりの消費者に合う商品を販売するサービスを今春に始める。同社が得意とする「より低コストで、簡単に動きを解析できる技術」(宮澤留以社長)を活用したオンラインサービスとなる。スマートフォンのアプリケーションを通じて解析したデータに基づき、ユーザーに適したシューズのインソールやコンプレッションタイツ、ソックスなどを開発・提案する。
(小堀真嗣)
新しい購入体験提供
サービス概要は、ユーザーが無料のスマホアプリ上でランニングフォームなど自分の体の動きを撮影した映像をアップロードする。映像をもとにそのユーザーの動きが解析される。そこに足形やトレーニング内容などの必要な情報を入力すると、そのユーザーに合った商品が提案される――というもの。

購入した商品をアプリに登録すると、さらに適した商品を提案する。ユーザーから購入商品に対するフィードバックを得るため、クーポンを付与するなどでデータが集まるよう工夫する。
それぞれの商品は、これまでのデータの蓄積から想定できるパターンをあらかじめ複数用意しておく。例えばコンプレッションタイツだと十数種類。部位によって着圧が異なる。ユーザーの解析結果に応じて、最適なパターンの商品を提案する。あるいはほかの商品も組み合わせ、ユーザーのパフォーマンスがより高まる提案をする。ユーザーのデータが蓄積されていくと、商品の改良や新商品の企画・開発、提案の精度向上に生かすことができる。
商品の生産はメーカーや商社などとの協業。サービスのシステム構築と運用はサイボウンが全て担うため、「協業相手は従来通りの物作りで勝負できる。サービスのシステム開発など持ち出しがあまりないので(メーカーや商社の)反応は上々」と話す。
開発から販売を高速で
目指すのは、「消費者のリアルなニーズを捉えた商品を作って売るサイクルを高速で回す」こと。「春夏、秋冬というシーズン内に2、3回転くらいさせるイメージ」を持つ。動きの計測と解析はサービスの根幹として同社が担い、データに基づく商品の設計、開発、販売は各商品を得意とするメーカーや小売業などと組む。だからこそ、「共創パートナーの存在が非常に重要」とし、企業連携を強化していきたい考えだ。
「日本一、足の速いスタートアップ」という宮澤社長。従業員は〝体育会系ばかり〟。社長自身も、中学から陸上競技の長距離走に打ち込み、大学は信州大学・繊維学部に進んで全日本大学駅伝に出場した。勉学の傍ら、自ら動作解析のAIとウェアラブルデバイスの開発にも勤しんだ。大学卒業後は繊維メーカーに就職し、ウェアラブル関連のコア技術開発に携わった経歴を持つ。
従業員の多くは東京大学をはじめとした理系大学院の出身。全員がコーディングから解析まで一人で完結できる。「自分たちで開発から検証を繰り返し、製品・サービスのリリースまで高速でやる体制を実現したくて起業した」という。

