キャンプ用品メーカーのスノーピークは今年度第4四半期(10~12月)から、大手スポーツ量販店などで「エントリーストア」と呼ぶ新たな販売拠点を広げる。これまで販売スタッフが常駐しない、単純な卸売り先だった取引先に、専用のPOP(店頭広告)などを置いた33平方メートル程度の売り場を設け、他ブランドと差別化する。入門者用商品も拡充し、キャンプビギナーの獲得と定着を図る。
(杉江潤平)
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同社の販売形態は、直接小売りする「直営店」と「オンラインストア」のほか、量販店・専門店内の専用売り場でスノーピークスタッフが常駐する「インストア」、同社の研修を受けた量販店や専門店側のスタッフが専用売り場で販売する「ショップインショップ」(SIS)、「単純な卸売り」がある。
このうち単純な卸売店では、これまでテントやタープ、キッチン用品などがアイテムごとにバラバラに陳列されることが多く、「商品がシステムデザイン化されているにもかかわらず、スノーピークの強みを生かせていなかった」(山井太社長)。
そこで卸売り先店舗に、同社商品を集積し、ロゴの露出も強めたエントリーストアを設置。従来型の卸売りをやめて、ブランドの統一したイメージを客に伝えられるようにする。既に大手各社と商談を進めており、19年向け新作を投入する今第4四半期から出店を開始。約200店で展開する計画だ。
エントリーストアでは、今春発売したテントとタープのセット品「エントリーパックTT」(TT、4万9800円)を中心に品揃えし、初回納品額は1店あたり約150万円。単純な卸売りによる売上高構成比は、今第2四半期(1~6月)段階で31.1%を占めるが、これまでの取引店舗の数は切り替えによって「あまり減らない」(山井社長)といい、各店での訴求力が強まるため、同販路での売り上げは、逆に増える見込みだ。
エントリーストアの出店に先駆け、キャンプ入門者用商品も増やす。TTに続き、5月には寝袋の2個セット品「エントリーパックSS」(9800円)を出したが、今後はそれらを補完する新商品も検討中だ。

◆TT、旧入門品超え
TTは、4月の本格販売以降、6月までで従来の入門者用テントだった「アメニティドーム」(AD)の、通期での売り上げと粗利益を上回った。入門者モデルは17年度年間で3億4300万円を売り上げたが、今期はTTの上期売り上げだけで3億8000万円(AD合算では4億6500万円)。粗利益も、前期が1億300万円だったのに対し、今上期はTTだけで1億8700万円(同2億1500万円)だった。ADが50%以下の低粗利品だったのに対しTTは50%以上で、粗利益を押し上げた。
TTのヒットにより、ブランドの顧客化が進むと期待する。同社によると、テントとタープを同一ブランドで揃えれば、寝具やキッチン用品も買い足す傾向があるという。しかしADの場合「その次にタープを買わず、50%が離脱していた」(山井社長)。一方、TTはテントとタープがセットになっているため、リピーター化しやすいとみる。