カミングスーン研究所所長シトウレイです、久々みんなー! 今回は2、3月に行われたミラノ、パリのファッションウィークで見かけたある出来事について、そしてそこから見えてきたある事についてお届けしたいと思います。
まず特筆すべきは「ショー会場のレッドカーペット化」の進化です。すさまじいことになっています! レッドカーペット化とはどういうことかと言いますと、例えばカンヌ映画祭。
映画祭へ向かう道のりのレッドカーペットでは、どんな俳優さんが来てどんな服を着ていたかがお茶の間の話題になりますよね。どんな映画が上映されてどんな評価を得たかが話題になるのは、割とその後になりがち。
ファッションショーの方向性もその傾向に流れつつあるんです。忖度(そんたく)を顧みず言えばズバリ、ショーではなくてスターが主役。「どんなスターが来たか」が、どんな服を発表したかより実質、重要事項になっている模様です。
ファッションショー会場付近にはスターの熱狂的なファンクラブの人たちが集い、「あれ? 私コンサート会場に紛れ込んだ…?」と勘違いするほど。
この方法は「ファッション業界の裾野を広げる」「よりブランドの認知度を上げる」という目的においては有効かもしれないけれど、個人的にはファッションショーの本質である「メゾンとして伝えたい美しさやかっこよさの提案(=美意識)」がすっぽり抜け落ちている気がしないでもなかったり。
ファッションブランドという美意識を提案する側が、それを表現するショーという方法において「話題になればそれでいい」という美意識のない考え方で臨んでいるというその自己矛盾。まったくもって本質的ではないですよね。この「本質が抜け落ちている」ことこそが、そのまま時代性の投影でもあると感じています。
でも安心してください(安村さん風に!)。ショーに集う人たちの声を丁寧に拾うと、そこに対する食傷感や違和感を感じている人は、実は結構な数でした。そういう理由からも、個人的にはこの流れに「揺り戻し」が起きる兆しを感じています。理由はもう一つ。ストリートにおけるファッションにその変化を感じたから!
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実は、トップ・オブ・トップのファッショニスタかいわいではいわゆる「映える」ものではなくて、改めてゴーバック・ベーシック、「定番アイテム」をどう今っぽく着こなすかをチャレンジしている人たちが多かったんです。
トレンチコート、デニム、モノトーン、ベーシックカラー、「コンバース」のオールスターや「マックスマーラ」のテディベアといった永久定番のアイテムをそのまま着る。挿し色皆無、抜け感皆無、おしゃれにおけるポイントはあえて作らない。
と、は、い、え!! 彼ら彼女らときたらなぜか不思議に「今っぽい」んです、抜群に!
その理由をひも解くと、実はみんな「定番とよばれるものを再解釈して自分の着こなしにしているから」。シルエット及びサイズ感、ベーシックカラーの微妙なニュアンス、着こなし方におけるバランスの調整、細かなこだわりにおしゃれエキスパートの匠(たくみ)の技を感じます。
例えば、コートをビッグサイズにした場合は、他のアイテムは極力排除、シンプルな着こなしにしつつ色合いもミニマムにします。デニム・オン・デニムのポイントはジャスト~ワンサイズ上を「腰骨ではく」。
マフラーやストールのかわりに、定番の何でもないニットを首周りにまきつける。新しいものを買い足さずとも今あるものでオシャレは出来る。まさに「何を着るかではなく、どう着るか」の究極にチャレンジしています。
これからの時代は「映える」ものから、本質を突いたものや、着る人自身のセンス(=中身)が投影されているものにひかれていく時代になる(もしくはなったらいいな…という希望)。そんなことを感じたシーズンでした。
それではまた次回お会いしましょう!シトウレイでした!
(写真=シトウレイ)