中国発のウルトラ・ファストファッション「シーイン」が、1856年創業の百貨店BHVマレに世界初の常設売り場(約1200平方メートル)を開設した。ファッションを主要産業とし、環境負荷や人権に法規制を進めるフランスでは、シーインの進出に対し政府、経済界、非政府団体らの反発が強まるなか、ECサイトでの違法商品の摘発が報じられた直後の開業となった。同売り場オープン前夜からBHVには警官が配備され、翌朝には機動隊が同店周辺を警備、一帯の道路が封鎖された。
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「パリ市庁舎(HV)のバザール(B)」の名を冠するこの百貨店は、リボリ通りを挟み、同舎と向かい合う。当日は通りを境に、シーイン売り場の整理券を手に2時間以上列に並ぶ来店客と、市庁舎側から「シーイン・アウト!」を叫ぶ反対派や政治家が対峙(たいじ)する光景となり、フランスが抱える矛盾を映し出していた。社会党のグレゴワール議員は「これは道徳的にも政治的にも経済的にも過ちであり、持続可能な発展モデルを保証することはできない」と訴え、仏環境団体のアクセル・ジベールさんも「毎日何千もの新商品を販売するシーインを当たり前のように扱うことはできない」と批判した。
同店のシーイン売り場は落ち着いた雰囲気に包まれた一方、買い物客の多くは価格設定に驚きを示した。「オンラインの方が安い」「ほとんどザラと変わらない」との声もあり、割引のあるサイトとの差が際立った。
BHVのフレデリック・メルラン社長は仏メディアに対し、「実店舗ではシーインの上位ラインで構成しているため価格が高めに見える」と説明し、「議論は多かったが、初日は予想以上の来客で成功だった」と語った。各商品にはサイト価格を確認できるQRコードが付され、開業日には購入額と同額をBHV内で使える商品券を配布した。
(パリ=松井孝予通信員)
