【連載】これからの幸せのかたち 働き方④

2017/05/05 06:30 更新


充実のバランス

経営者の思いが反映しやすい中小規模の企業では、働き方にも個性が光る。ワークライフバランスを重視し、心豊かに働き続けられる目線がある。

■全員が残業なし

 生活雑貨の人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムは、創業時から全員が午後6時退社。残業無しだ。青木耕平社長と妹の佐藤友子取締役が設立した当初から、ともに子供やパートナーがいたため、持続可能な働き方を考えた結果だった。現在、社員の7割を占める女性の力を引き出す土台でもある。「優秀な女性ほど、長期的思考を持っている。たとえ今25歳・独身でも、残業続きだとこの先、結婚や出産を経て働けるのかと不安に思う。そしてモチベーションが落ちてしまう」と青木社長は話す。

 稼働時間内の生産性を高めるには、現場はもちろん、「マネジメント側も汗をかく必要がある」。チームリーダーはやるべきこと、やるべきでないことの判断に加え、メンバーと十分に対話し、仕事ぶりをみての調整が欠かせない。現場が踏むアクセルに、適切なブレーキをかけるのも経営者の役割だ。

 密度濃く働く中で、気持ちを緩める時間も設けている。週1回の社員食堂の日には、料理家を招き、皆で同じメニューを囲む。「もめごとの多くは、相手を知らず、想像で不満を感じたりして起きる。インフォーマルな場で話し、少しプライベートを知るだけで緩和することも」。終業後の飲み会は参加者が限られるが、社食は皆が機会を得られる点もメリットだ。

料理家を招いての社食の日(クラシコム)

■変化に合わせて

 レディスアパレルメーカー、フィオールフィオーレ(大阪市)は男性社員が1人だけの会社。創業から残業はほとんどしない社風で、槇本加代社長はずっと「会社だけでなく、私生活を楽しんでほしい。その方が仕事もクリエイティブになる」と社員に言ってきた。

 ライフスタイルの変化に応じた働きやすい環境、雰囲気作りを重視する。出産、産休を経ての復帰は、ごく普通のこと。勤務時間も柔軟だ。オフィス勤務は通常9時~午後6時だが、大阪本社の営業トップは9時~午後5時、東京の企画営業の担当者は9時半~午後4時で働く。時短分は減給だが、いつでも元の条件に戻れる。

 「子供に手をかけられる時間は人生の中でごく一部だからこそ、一緒に過ごせる時を大切にしてほしい」と話す槇本社長。自らが4月上旬から9時~午後2時勤務にした。長女が小学校に入学し、学童保育がない地域で、「鍵っ子にしたくない」ための短時間勤務だ。社員も希望すれば、同様の短時間勤務を認めるという。

(中村維、古川富雄)



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