【連載】これからの幸せのかたち 働き方③

2017/05/04 06:30 更新


誇れる職場に

SCの営業時間の短縮が目立ってきた。深刻な人材難が、ファッション販売に関わる大勢の「職場」の条件を変え始めた。

■休憩室の整備進む

 「休憩時間くらい一人になりたいのではないか」。顧客との密なコミュニケーションを求められる販売スタッフの休憩室に、一人になれるスペースを設けるSCが現れた。

 これまでも、SCはは休憩室の整備を進めてきた。清潔さはもちろんのこと、充実したパウダールームを設けたり、コンビニを入れたり、マッサージ器を置いたり…。そして、プライバシーの確保に至った。休憩室ばかりでなく、テナントの従業員が利用できる保育園を併設するケースもある。

 「CS(顧客満足)はES(従業員満足)から」。この合言葉のもと、働く環境の整備は、SCの役割として認識が広がっていた。ここにきて、さらに加速しているのは、各テナントの人材確保の問題が、SCとしても見過ごすことができない水準にきていることを示す。

 誇れるような魅力がなければ、十分な人員が確保できなくなる。レディスを中心に販売不振が続き、「光るのはブランド名よりも店ごとの接客力」と認識され始めた。そこで強く意識されるようになったのが、人材を集めるだけでなく〝逃がさない〟ことだ。テナント各社が出店意欲を落とすなか、店の入れ替えよりも既存店の強化に力を注がざるを得ない状況もある。この現実が、販売スタッフを逃がさず、育成するための環境の整備へと向かわせている。


イオンモール新小松の専門店ゾーンは午後9時まで 

■CSとのバランス

 「人材確保でみんな大変ななか、何かできないか」。SCで、営業時間の短縮や休館日の新設・拡大が進みつつある。年中無休や夜間営業はSCにとって商機だったが、テナント企業から要望が強く、ESの拡大が求められているためだ。

 すでにルミネ、アトレなどが営業時間の短縮や休館を表明、実施している。イオンモールでも施設ごとに対応し、午後10時まで一律の営業時間というものはなくなった。ただ、「今の時間で消費者に満足してもらっている」認識が基本だ。無休および夜間営業というCSの価値は小さくない。売り上げと働き方のバランスは欠かせない。

 「うちが休館日を設けても、大型テナントには営業するところが出てくる」。働き方改革といっても国を挙げての対応ではなく、プレミアムフライデーでもSCは忙しくなる側。調整に二の足を踏むこともあるが、それでも、働く条件を変えられるのは、テナントではなくSCの方だ。SC流の工夫があっていい。

(田村光龍)



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