【連載】これからの幸せのかたち 働き方②

2017/05/03 06:30 更新


誰もが主体的に

魅力ある業界であるためには、従来通りの働き方や制度では通用しない。多様な人材の活躍を狙い、ファッション業界でも新しい試みが始まっている。

■効率アップ

 「働きやすい環境作り」を重視するレナウンは昨年7月、ダイバーシティ推進委員会を設置した。女性の活躍や育児、介護などの課題の解決に取り組む。中でも在宅勤務を「これからの働き方の肝」とし、来年の本格導入に向けて今年1~3月、トライアルを実施した。広報から営業まで、男女を問わずに管理職や育児、介護中など様々な背景を持つ社員20人を対象とした。

 「すごく便利」と話すのは、アシスタントマーチャンダイザーの髙城裕子さん。4歳と1歳の2人の子供の発病で急な休みを余儀なくされることは多い。在宅勤務は「仕事ができないストレス」の解消につながる。通勤時間も節約でき、制度を利用するため「以前よりも先々のスケジュールを考えて仕事を組み立てるようになった」。

 厚生労働省による子育てサポート認定「くるみんマーク」を持つ同社は、男性の育休取得も推奨している。1日だけ取得する社員が大半だったが、この1年ほどで状況が変わってきた。昨年、男性では過去最長の約2カ月の育休を取得したマーチャンダイザーの横山哲史さんは、「子供が小さい時に一緒に過ごせて良かった」と話す。育休を経験して「以前に増して効率的に仕事をするようになった」だけでなく、育児中の女性社員への理解も深まったという。

在宅勤務をするレナウンの社員。まずは育児・介護中の社員を中心に想定するが、ゆくゆくは対象を全社員に広げ「趣味のためにも活用できるようにしたい」  

■とにかく共有

 3月、エーアンドエスが神戸バルにオープンした「アガット・アンドメモリア」は、結婚や出産など〝記念〟をテーマにした「アガット」の新業態だ。昨春、子供を持つ母親4人を専任で起用したマザーチームプロジェクトが企画・運用する。

 同プロジェクトは母親の視点を生かすとともに、コアタイム無しのフレックス制度を導入するなど実験的な働き方にも取り組む。皆が時短勤務。「時間がないなら、周りを巻き込む。やらなくていいことは切り捨てる」と小菅裕子アガット部マザープロダクト課課長は話す。チーム内では「とにかく共有」。メールはccをつけ、会議や打ち合わせは担当外でも全員参加。スケジュールは参観日などの私用も共有し状況を把握し合った。

 一般的に子供を持つ女性は「無理させられない」との配慮から、重要な案件やポストから外されがちだ。「私自身、以前は面白そうなプロジェクトがあっても、何かで穴を開けてしまうかもと、挙手できないジレンマがあった」。ショップ開設を経て、今は「もっとやれる」と自信をつけた。

(佐々木遥、中村維)



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