三洋貿易は海洋プラスチック問題の原因となるオーシャンバウンド・プラスチック(OBP)をアップサイクルしたケミカル製品「#tide(タイド)」の日本国内での販売を進めているが、近く織物の在庫販売も開始する。OBPは、海岸から約50キロメートル以内の内陸部に捨てられ、海に流出する可能性の高いプラスチックごみ。海にたまったごみの約80%は陸上から流出したとされる。
(藤浦修一)
#タイドは、スイスのタイド・オーシャンが事業化したOBPを100%アップサイクルするシステム、商品。三洋貿易は22年9月にタイドとライセンス契約、日本市場への提供を開始した。タイドの欧州事業はアフリカでOBPを回収、欧州域内でペレット化、北米はメキシコで回収、アップサイクルしている。アジアはタイとインドネシア、フィリピンで回収、タイでペレットにしている。回収は、タイドがコレクターと呼ぶ現地の個人と契約、集めたごみの量に応じて対価を支払う。環境保全と同時に発展途上国での雇用創出にもつなげている。
OBPからアップサイクルされるのはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなど。バージン原料に近いグレードを保ち、生産工程での二酸化炭素排出量は79%削減できるとしている。三洋貿易では、これらのプラスチック原料を主にタイの拠点から供給を受け、日本国内や日系企業のアジア拠点向けに販売している。
販売形態はペレット売りの他、中国の協力工場で原糸生産、織布、染色も行い、原糸、織物に加工しての販売も行っている。原糸は75~150デニールが中心。織物は、年末から来年初めをめどに、染め上げ反6色の標準品の在庫販売を始める予定。原糸は5~10トン規模だと1キロあたり1300~1500円、生地は少量生産だと1メートルあたり2500円程度、在庫品は1500~2000円程度となる見込み。
プラスチック製品は既にコーベルが#タイド100%のハンガーを販売。この他時計バンドや眼鏡フレーム、飲料カップや容器、自動車のフロアマット、インパネ、シートなどに用途が広がっている。
タイドの23年度の全世界販売実績は1200トン、24年は1700~1800トンで、25年には2000トンを上回るとみている。
GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)をはじめとした各種認証を取得。またノルウェーのベンチャー企業と開発したバーコードでトレーサビリティー(履歴管理)を一目でビジュアルに確認できる「マテリアルパスポート」を導入している。