名優が挑むオートクチュール「ファントム・スレッド」

2018/05/21 05:56 更新


(c)2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

 ダニエル・デイ・ルイスが役者人生最後の作品として主演した「ファントム・スレッド」が日本公開になる。50年代のロンドンを舞台に、社交界から注目を集めたオートクチュールの仕立て屋を演じる。役作りのために約1年間、ニューヨーク・シティ・バレエ団の衣装監督のもとで裁縫の基本から立体裁断、採寸方法など、洋裁の全てを学んだという。

【関連記事】美しい映像が語るストーリー(宇佐美浩子)

 「役者はさまざまな職業体験をできるのも楽しみである」というデイ・ルイスのコメントを目や耳にした経験のある方もいるだろう。その七変化的こだわりともいえる入魂に、毎度驚く。今回も洋裁の上達ぶりに、本作監督いわく「トレーニング終了時には『バレンシアガ』のスーツを複製できるほどの技を身に着けていた」のだそう。

 そんな名優にはもう一つの顔がある。それは靴職人。ひところ、俳優業を休みイタリア・フィレンツェの「革の魔術師」という異名を持つハンドメイドの靴職人ステファノ・ベーメルの工房で靴作りを学んでいたのは有名な話。そうした経験も伴い、本作でデザイナーを演じることはリアルな彼の一面であるともいえるわけだ。

 ビクトリア女王時代の東ロンドンで、王侯貴族の服を作るために長時間労働を強いられたお針子たちが、仕事が終わっても「見えない糸」を縫い続けたという逸話に由来しているタイトルも印象的。26日から全国順次公開予定。

(ライフスタイルジャーナリスト・宇佐美浩子)




この記事に関連する記事