地方都市でアウトドアを切り口とした個店がフィールドでのイベントによるコミュニティー作りで成果を上げている。顧客を巻き込みながらオーナー自身が自然の中で遊ぶ楽しさを共有することが大切。ネットで気軽に何でも買える時代だからこそ、リアルな体験の場を通して服の価値を見直すきっかけにもなる。
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♦自転車で地元をのんびり
「サンデイ」
甲府市中心街から徒歩10分で山のふもとに着くという恵まれた自然環境を生かし、定期的にアウトドアイベントを続けるトゥデイイズオーケイの石川幸之助代表。同社は郊外にアウトドアをテーマに服を着る楽しさを提案するセレクトショップ「サンデイ」を構える。「顧客はもちろん、自分たちも楽しまないとイベントは長続きしない。短期的に直接的な売り上げも求めてはいけない。結果的にコミュニティーが生まれ、先につながる何かが見つかるはず」と自然体を貫く。

創業から9年。当初は月1回ハイキングイベントをしていた。石川代表がプライベートな山登りで顧客と一緒に行くこともある。最近、月1回定例化しているのは自転車イベント。地元の川原をのんびり走り、汗をかき、最後にコーヒーを飲んでくつろぐ。「地方は車社会なので普段から走ることが少ない。イベントを通じて身近に感じてもらい自転車に興味を持つきっかけになれれば」と〝ママチャリ〟でも、子供でも気軽に参加できるように心掛けている。その先にバイクパッキングなどを楽しむ人も増えるかもしれない。
夏に本栖湖のキャンプ場を2日間借り切った大型イベント「アウトドアエクスペリエンス」には地元の顧客だけでなく、東京、静岡、長野など広域から300人が参加した。アウトドアに精通したカナダ人とガレージブランド「ロウロウマウンテンワークス」とサンデイで共同開催。参加者はトレイルランニングやキャンプ、ハイキング、自転車、ヨガ、サップなど様々なアクティビティーを楽しんだ。

今月には名古屋の自転車ショップ「サークルズ」と共同で2泊3日のイベント「ライドアライブ」を開催した。自転車でキャンプ場まで40キロ走り、山登りして自転車で帰る。石川代表は「富士山や八ヶ岳など有名な場所に頼らず、甲府のディープな世界を堪能してもらいたい」とコース設定に苦心した。「不便な自然の中、自力でつらい道のりを乗り越えることで、文明に頼り切った生活を送る普段では気づかない大切なことが発見できるのがだいご味」とアウトドアイベントを通して自らの思いを伝え続ける。
(繊研新聞本紙9月27日付)