コミュニティー作りが得意なアウトドア系個店㊤

2019/01/02 06:30 更新


 地方都市でアウトドアを切り口とした個店がフィールドでのイベントによるコミュニティー作りで成果を上げている。顧客を巻き込みながらオーナー自身が自然の中で遊ぶ楽しさを共有することが大切。ネットで気軽に何でも買える時代だからこそ、リアルな体験の場を通して服の価値を見直すきっかけにもなる。

♦カヌーの川旅や「野営会」

「ラマルシェメルヴェーユ」

 機能性とファッション性を追求した「ラマルシェメルヴェーユ」の水上宗典代表はアウトドアライフを通じた常連客とのコミュニティー作りに力を入れている。カヌーでの川旅をはじめ、「野営会」(キャンプでたき火を囲みながら飲む)を定期的に開く。「今の時代、SNSでのつながりだけでは満たされない思いを持つ人が多く、自分の居場所=コミュニティーとしてリアルな体験ができる場を求めている」とみている。

雑木林に囲まれたログハウス型のショップには常連客が集う(ラマルシェメルヴェーユ)

 カヌーの川旅には平均20人が参加。10年以上の経験者でグラスファイバー製の折りたたみ式カヌーの販売も手掛ける水上代表がパドリングの基本からコース取り、川の危険性まで教える。「キャンプ人気をブームで終わらせないためにも、その先のアクティビティーとしてカヌーの楽しさを伝え、新たなシーンを作りたい」と強調する。野営会では初参加者がいる時は公園、常連ばかりだと森に出かける。既婚者のビジネスマンが多く、毎回10人前後が参加する。キャンプやたき火のセッティングなどのノウハウはネットでは手に入らない実践的な知恵が詰まっている。環境に配慮したマナーも大切にしている。アウトドア以外でも教えられるほどの腕前を持つビリヤードで毎週土曜日の夜に常連客が集う。

 「数年前から遊ぶ場、おしゃれする場が街中から野外フェスやキャンプなどフィールドに変わった」との思いが強くなり、今年3月に17年間、店を構えていた中心部の商店街から車で約20分の郊外に移転した。新店は雑木林に囲まれたテナント用ログハウスが10軒以上並ぶエリア内。店内にはキャンプグッズのほか、機能性に優れたウェアにデザイン性の高い街着がミックスされている。フィールドでも綿のボタンダウンシャツにツイードのジャケットなど天然素材の普段着も提案する。幹線道路沿いなので車社会の地方都市では駐車場が少ない中心街よりも気軽に立ち寄れる。ウッドデッキにターフを張り、薪(まき)ストーブを囲んでゆったりくつろげる空間のため、移転後に新規のリピーターも増えている。今まで以上に「店がコミュニティーの起点として集い、つながれる場」になってきた。

カヌーを楽しむ仲間を作る水上代表

(繊研新聞本紙9月27日付)



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