ブランドの立ち上げは、「目も見えず耳も聞こえない。もう捨てて欲しい」という祖母の寂しげな一言がきっかけだった。様々な障害があっても人生を謳歌(おうか)して欲しい、人生が生きづらいと感じている人たちに寄り添うような商品を作れたら――田村優季さんはこうした思いから、インクルーシブ(包括的)デザインのランジェリー「OUCA」(オウカ)をスタートした。軽く柔らかく、前身頃と後ろ身頃も問わずに着られるタンクトップをはじめ、体形や年齢、障害などの制限や不満を取り除くアイテムだ。
(山田太志)
田村さんは服飾専門学校を卒業し、欧州に留学。帰国後、技術力に定評のある縫製工場で経験を積み、丸縫いまでこなす。その後はフリーとして、主にアウターを受注生産していた。ストレスに悩み実家に戻っていた時、祖母からのショッキングな言葉を聞く。これが大きな転機になった。
自らも敏感肌だったこともあり、オウカで選んだアイテムはランジェリー。ただ、デザインや素材、ロットをはじめ、「アウターとインナーは天と地ほどの違い」。ビジネスを本格化する前に、「何を作りたいのか、誰に届けたいのか。こうした自分の価値観をフェイスブックに2年間、毎日休まず投稿し続けた」と振り返る。