1月1日の午後4時10分ごろ、能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生した。化合繊テキスタイルを主力とする北陸産地でも広範に揺れを観測、一部で建屋の損壊などがあり、操業へも影響が出ている。商業施設も年始の営業に影響し、エリアによっては物流網が寸断している。
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石川県では、4日に予定されていた商工会議所など経済3団体の賀詞交換会を中止した。揺れが大きかった能登地方近辺の繊維製造業は、かほく市、羽咋市、志賀町などに織布、撚糸・糸加工、織物準備、細幅・組ひもなどの工場が集積しており被害が懸念される。
織物製造で国内最大手の丸井織物は震度6弱の中能登町と震度6強の七尾市に工場が点在する。設備に目立ったダメージはないものの、建屋が損傷した。人的被害はないが、一部、家屋が損傷した従業員があった。水道や物流などインフラに大きな影響はない。年始は4日に操業開始予定だったが、稼働再開まで一定の時間を要する模様。2日に対策本部を設置、従業員の安全を最優先に早期の生産再開を目指す。一方、プリントTシャツの「アップティー」工場は影響が軽微で、4日に稼働した。
震度5強の石川県能美市にある小松マテーレは、本社内で書類が散乱するなどしたが、4日午前の段階で原状復帰した。建屋・設備の目立った損傷はなく、ボイラーの点検を進めている。年始の式典などは延期したが、4日午後には工場を稼働した。
東レは原糸生産の石川工場(能美市)で建屋・設備が一部損傷し、稼働への影響など程度を確認中。今のところ人的被害はなく、引き続き確認を進める。
東洋紡の富山事業所は庄川工場(射水市)、井波工場(南砺市)の建屋・設備が一部損傷した。庄川工場を7日まで操業停止し、9日以降の再開へ向けて状況確認と復旧作業に充てる。
ニットメーカーのエフアイニット(富山県高岡市)は本社兼工場2階の壁や天井が一部はがれ落ちたものの、操業に影響はない。生産設備は編み機の動作確認を進めている。
一村産業は子会社の創和テキスタイル(羽咋市)、丸一繊維(新潟県糸魚川市)で出勤可能な従業員で三が日に点検を実施。建屋・設備の被災の有無など更に詳細を確認している。
福井、新潟にテキスタイル3社を持つ帝人フロンティアは、いずれも建屋・設備、人的被害はない。
富山に生産拠点を持つシキボウは、人的・物的被害はない。富山工場でトリアセテート繊維を製造する三菱ケミカルは安全のため、1日の操業を停止した。安全を確認後、順次生産再開する予定。
福井県繊維協会によると県内の会員企業で目立った被害は報告されていない。
物流にも懸念
YKKは1月3日までに、富山地区や黒部事業所に勤務する全社員の安全を確認した。黒部事業所の工場建屋では水漏れなどの不具合が数箇所あり、8日の操業開始に向けて復旧対応を進めていく。生産や物流への影響は現在精査中。黒部事業所の生産ラインは元々7日まで休みで、8日から操業予定となっている。
富山県小矢部市に本店やグループ企業の拠点があるゴールドウインは、建物などに一部損傷などがあったが、業務上支障のある大きな被害は確認されていないという。従業員への人的被害もない。ただ、市内を通る国道で道路崩落や亀裂、電柱の傾きなどが報告されており、物流への影響については確認を進めている。
大手スポーツ小売りのゼビオホールディングスは、金沢市にある「スーパースポーツゼビオアピタタウン金沢ベイ店」の営業を休止している。郡山本社に緊急災害対策本部を設置し、対応にあたっている。
レインウェアメーカーのカジメイク(富山県高岡市)は大きな被害がなく、社員も無事だった。