【上海=石井久美子】アダストリアが中国で大きな勝負に出る。21日、主力ライフスタイルブランド「ニコアンド」のグローバル旗艦店が上海にオープンする。ECが強い中国での切り札が、編集型の幅広い品揃えや飲食コンテンツ。訪れる度に新しい発見がある実店舗ならではの空間をベースに、中国の消費者に向けたローカルMDも加える。ニコアンドが日本で成功してきた〝人を呼ぶ店作り〟の、新たな挑戦が始まる。
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淮海中路の一等地にあり、売り場面積2600平方メートル(総面積3500平方メートル)はブランド最大だ。店は3層で、目玉は3階のフードゾーン。飲食企業と組んでオリジナルでステーキ、シーフード、サラダ、パスタ、ピザ、バーの6店を新たに作った。共通の広いテーブルスペースに様々な人が集い食事ができる場所だ。ECでも可能な物販と異なり、食は来店につなげやすい。
1、2階は服、生活雑貨、家具、カフェや、定期的にテーマの変わる編集スペースなど、ニコアンドの幅広いコンテンツを詰め込んだ。「アパレルのみの業態は出尽くしているし有力な現地ブランドも増えている。それに比べてライフスタイルショップや面白い雑貨は中国にはまだ少ない」と、北村嘉輝取締役営業統括本部長。
日本の良さを持ち込むだけでなく、ローカルMDも重要視している。都市名とブランドロゴが入った限定アイテムや、現地ブランドの服を一部販売する。カフェでは現地の紅茶屋の「voler」と協業している。今後も現地ブランドとの協業や現地企画を進める。ワークショップなども仕掛け、「地道に、ニコアンドを好きな人を増やしたい」。日本よりも若い30歳前後の男女を見込む。
同店はニコアンドの売り上げ一番店を目指し単店での採算も狙う。今後の大量出店は考えておらず、ブランディングを表現できる店舗を出店しつつ、ECとも連携して中国事業全体での成功モデルを描く。20年春からは「ウィーチャット・ミニプログラム」での販売を予定する。
同社は中国でブランド複合店「コレクトポイント」を全て退店し、ブランドの個性を打ち出す単独出店へと戦略を変更した。その先陣を切るのがニコアンドの上海1号店だ。日々変化する中国市場で勝ち抜くため、「店の中身も、当社らしくどんどん修正していく」構えだ。