【ニュース2021④】ECと実店舗の連携 リアル接点でデジタルの強み生かす

2021/12/30 06:29 更新


 20年のように完全休業や時短営業を強いられることこそなかったものの、21年も実店舗での販売はコロナ禍の影響を大きく受けた。ECは伸びたが、実店舗での販売は客足が減り、伸び悩んだ企業が多い。こうした中、ネットとリアル双方の販売環境の連携強化で、売り上げを伸ばそうとする動きが加速した。

送客と販売の両方を

 アダストリアは5月にブランドミックスのOMO(オンラインとオフラインの融合)型店舗「ドットエスティストア」を出した。自社EC「ドットエスティ」として出した初の実店舗で、グループの25以上のブランドを一つの店で試着、購買でき、販売と単独ブランド店、ECへの送客の二つの役割を担う。

 店内では、店舗スタッフによるコーディネート提案、売れ筋ランキング、ブランド横断でお薦め商品がわかるレコメンド、スタッフによるスタイリング相談など、EC上で受けられる四つのサービスの提供も店頭に置いたモニターやデジタルサイネージなどを駆使して行う。

 ECへの送客だけではなく、店頭での販売も重視するのは同社が「顧客との接点×ECが私たちの強み」(福田三千男会長)と考えているからだ。実際、5月にららぽーとTOKYO-BAY店、ミッテン府中店と出店し、8月末までの売上高は予算比31.5%増と好調に推移した。12月には大阪のなんばシティにも出した。

 ECと実店舗を結ぶ動きは、コロナ禍以前から見られた。インディテックスは、実店舗とECの在庫一元化に18年から着手し、双方を結ぶ新プラットフォームも導入した。この結果、ネットでもリアルでも客にとって最適な買い物環境を随時提供できるので、21年度に入ってから業績の回復が早い。

 ファーストリテイリングも実店舗とECの在庫を一元化し、EC購入商品の店舗受け取りや店舗在庫のEC向け配送ができる。すでに店舗でのEC購入商品受け取りは、ECでの販売の4割を占める。商品を受け取った客がついでに店頭に並ぶ別の商品を買うこともあるため、相乗効果が得られているという。

ECとリアル店の強みを掛け合わせることで新たな購買体験を提供(5月にららぽーとTOKYO-BAYに開業したドットエスティストア)

〝最適〟は客が決める

 ECモールもリアルの接点が大切であることを認識している。21年の動きでいえば、11月にゾゾが阪急うめだ本店のイベントに出したDtoC(メーカー直販)事業の期間限定店や、楽天グループが「楽天ファッション」のOMO型期間限定店を渋谷スクランブルスクエアに開設したのは、その証左といえる。

 ECであれ、実店舗であれ、自分に合う品揃えやサービスを提供できる店に客は集まる。客はその時々に応じて自分にとって最適の買い方を選ぶ。むしろファッションをECで買う客が増えるほど、顧客とのリアルな接点の重要性は増す。デジタルかリアル、どちらかが生き残る二者択一には決してならない。

(繊研新聞本紙21年12月22日付)



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